人生を楽しみたい人に贈る “留学のススメ” 前編(社会人・大学生向け)

こんにちは。外苑ソーシャルアカデミーの山田です。今回のテーマは留学です。特に、これまで留学をしたことがない方向けに、できるだけ分かりやすい留学案内と、留学の意味を深める方法についてお伝えしたいと思います。

これまで留学を考えたことのない方も、機会があれば一度くらい留学してみたかったという方も、またこれからぜひ留学をしてみたいとお考えの方も、これを機に一度シュミレーションしてみてはいかがでしょうか。また一度経験のある方も、より充実した留学をもう一度してみるのはいかがでしょう。

私がなぜ留学を勧めるのかといえば、何と言っても皆さんの人生を一発で生き生きとしたものに変える力を持った、インパクトの強いイベントだからです。普通の海外旅行で見ることができるのは、観光客向けの準備されたシーン。もちろんそれはそれで楽しい時間ですが、その国の本当の空気感や、人々の生活の息吹、文化の生感覚まで到達することはなかなかできません。異文化との遭遇は、時に強烈なインパクトを私たちにもたらします。

社会人の方は、いまさら留学なんてと思うかもしれません。ハードルが高いし、いろいろと手続きがめんどくさそうだ、仕事を考えたら現実的に難しいなど、いろいろ思うかもしれませんが、実はそれほどでもないのです。私の友人の中にも、40代50代で初めての留学を経験した人たちが何人もいます。要はやり方です。留学は決して大学生だけのものではないのです。大人には大人の留学の仕方があるのです。

また、大学生の方も、学生時代のうちに一度くらいは留学を経験しておきたいと思う人は結構いると思います。あるいはこれまで留学を考えていなかった人も、逆に留学に軽薄なイメージを持っている人もいるかもしれません。確かにかつては何をしに来たのだか分からない留学生もいました。しかし、近年は日本人学生の英語力の向上もあり、少しずつ状況が変わってきています。異文化の在り方を腰を据えて見つめることができる留学には、やはり他に変え難い衝撃と底力があり、行かなければ決して分からない真価が確実にあります。そして参加する人の姿勢次第で、その価値が0にも1000にも変わります。異なる文化に前向きに触れる姿勢や、本質を理解したいという気持ちがあれば、必ずや凄い経験になるはずです。これを機に学生時代に経験しておくイベントとして、留学を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。とはいえ、まず何から考えればいいのか分からないと思います。また、留学の価値を最大化するために抑えておくべき「肝」があります。私自身4回の留学と、数回の引率をする中で留学先での学生たちの行動を見て「もったいないなぁ」と思うことが数えきれないくらいありました。本物の留学にするためには本物の準備が必要です。まずは留学する意味を改めてしっかりと掘り下げ、何をしておくべきなのか、現地ではどんな行動をとればいいのかをお伝えしていきたいと思います。皆さんの留学の価値を最大化するために、お役に立てばと思います。

留学にはどんなメリットがあるのか

私は、留学経験はとても多くのことをあなたにもたらしてくれるだろうと思っています。古い西欧の街並みと過ごしやすい気候のなかでバックグラウンドの異なる人々と交わり、異なる言語で生活する日々はまさに「非日常」。様々な学びや発見、驚き、喜びをもたらしてくれるはずです。また、たった1人で異国に身を置くことは、初めての方にとってはなかなかの冒険になるでしょう。しかし外の世界を自らの目でじかに見ることは、新しい視点や未知の価値観を取り入れる経験となり、その後の人生に大きな意味をもたらしてくれるはずです。

世界観の文法が異なる街に住み、様々な国籍の人々と交流すること。異なる言語で思考し生活すること。異国の地で勉強に集中的に取り組むこと。文化とは何かを探究すること‥‥。そこにはきっと充実した日々が待っています。勉強だけでなく、青空市場で買い物をしたり、博物館や美術館を巡ったり、週末には電車や長距離バスに乗って旅に出ることもできる。初めての留学は何もかもが新鮮で、好奇心と緊張感に溢れた日々になることでしょう。

一方で、日本の良さも悪さも沢山見えてくるはずです。安心して生活ができる治安の良さ、食べるものの美味しさ、日本独特の伝統的な雰囲気‥‥‥客観的に日本という国がどんな国なのか、外側から相対化して観察することができる絶好の機会です。1人離れて異国に身を置くことで、普段の生活や家族のありがたみも身に染みるかもしれません。ありふれていると思っていた日常を振り返り、感謝する機会になるかもしれません。また、普段感じることのない「マイノリティーとしての経験」をすることは、日本に戻ってから生かせる場面があるはずです。1人、異世界に暮らす経験は、何かと神経が研ぎ澄まされ、実に多くを感じる時間になるのではないかと思います。

また、食べることが好きな人や、食の雑学に興味がある人にとって、海外は興味が尽きません。スーパーマーケットひとつとっても、よく見れば、知らないものだらけだと思います。ドーバーの舌平目が売ってたら、買ってみて寮のキッチンでグリルしてみる。初めて見る野菜があったら試してみる。キッチンのないホテル滞在の旅行ではできないことです。日本食から離れて海外の食文化を理解するのもよい経験です。

さらに、外国人の仲間ができれば、お互い母国の料理を作り合うなど、多国籍の本物の料理を味わう機会もできるかもしれません。そして何よりも彼らと過ごす時間は、きっと一生の思い出になることでしょう。時には習慣の違いや考え方の違い、あるいは宗教的な衝撃を受けることもあるかもしれません。こうした出来事の一つ一つが、今後のあなたの人生にとってとても価値ある経験になると思います。世界がどんな小世界の集まりなのか、肌感覚で理解できるようになるはずです。

海外に親友ができたら

留学の価値は自分の行動次第で本当に大きく変わります。しかし、イギリスで日本の大学生たちを見ていて「もったいないなぁ」ということがとても多いのです。ほんの少し踏み込めば、ちょっとだけ行動をかえれば、得られるものは大きく変わってきます。留学で得られるものの中でも、最も価値の大きなものは人間、つまり外国に大事な友人ができることです。これは行けば必ずできるというわけではありません。出会いの種は沢山転がっていますが、それを育てられるかどうかはあなた次第です。しかし、まるきり環境の異なる遠く離れた場所に、バックグラウンドの違う親友ができれば、彼はあなたの世界の見方を大きく変えてくれ、人間世界を理解するうえで、計り知れない示唆を与えてくれることでしょう。もしかするとその後も得難い体験をすることもできるかもしれません。

私の親友はトルコ人です。彼は私が初めて留学したときにできた親友で、以来ずっと付き合いが続いています。彼の元に遊びに行ったこともあれば、彼が日本に来たこともあります。トルコに行ったとき、イスタンブールではひと通りの観光もしましたが、やはり友人の案内でめぐると中身の深さが全く変わります。絶品のイシュケンベチョルバスや黒海の魚を味わい、アジアとヨーロッパの境界であるボルフォラス海峡の船上からそこを航行するロシアの潜水艦を観察し、一週間前に大規模なテロがあった場所にも案内してもらいました。トプカプ宮殿もプルーモスクも金角湾も詳しくガイドしてくれました。こうした旅は、地元っ子の1番のおすすめのフルコースで満たされていきます。

さらに彼のローカルタウンに飛行機で移動しましたが、彼が居住するのはシリアとの国境に近く、イスラムとアラブの文化が入り混じった実にエキゾチックな街です。この街自体に日本人はめったに訪れませんが、その中でもさらに地元の奥の奥、まさにローカルなダウンタウンのマーケットやアラブ式の伝統的なカフェなど、おそらく99.999%の日本人が立ち入ったことのないエリアにまで連れて行ってくれたことがあります。古い家屋の立ち並んだ商店街には、何種類もの色とりどりの香辛料がいくつも山のように積まれ、スパイシーな香りを放っています。クルミを葡萄果汁で固めた不思議な伝統の食べ物が天井から吊るされ、見たことのない調理器具がいくつも並べられています。トロイの時代から続くというこの地独特の革靴の店があります。赤とオレンジの分厚いアラビアンカーペットが敷かれた茶室のようなお店では、頭上から真っ白な天蓋が降ろされ、人々は小さな炬燵の前に座り、ピスタチオコーヒーや本物の水煙草を楽しんでいます。それはまさにエキゾティックそのもので実に興味深く、地球上にはこのようなところがあったのだと感慨しきりでした。また、トルコのニュースキャスターやジャーナリスト、大学教授、経済界の大物たちにも引き合わせてもらい、彼の家で食卓を共にしたのも機知に富んだ実に楽しい時間でした。

もちろんこんな経験は極めて得難いもので、おそらく殆どの日本人がしたことがない経験を私はさせてもらったと思っています。しかし、こうした稀有な経験ができたこともさることながら、何より大きなことは、遠く離れた地に人生を通じて大事なことを分かち合っていける友が存在することなのです。この感覚をうまく説明する言葉が見つかりません。でも何か大きな心の支えが海外にあるのです。こうした稀有な経験も、彼という親友の存在も、留学をしなければ決して有り得ませんでした。こうした経験が私の人生の価値観を大きく変えたことは疑う余地がありません。

私の場合は実に幸運なことに、思いやりと知性に溢れた友人を得ることができました。留学があなたにどれだけのものをもたらすのかは自分のアクション次第です。海外にいる友人との深い付き合いは、言葉や文化の力の大きさを理解できるとともに、人間どうしはそうした違いを越えて分かり合えることを肌で感じることにつながると思います。また同時に彼には私とは異なるバックグラウンドがあり、踏み込めないところがあることも、偽らざる事実として突きつけられることでしょう。楽しいことばかりでなく、一筋縄ではいかないことも含めて人間世界を理解すること。これはグローバルな世界を生きていくうえで、欠かせない感覚だと思います。

留学にはどんな種類があるのか 初めての留学に最適なのは?

さて、ここからは一つ一つステップを踏んで留学準備を考えてみましょう。留学にもいろいろな種類があり、短期・長期の語学留学から、大学の交換留学、インターンシップや技術習得を目的にした留学、そして現地で調査や学問の習得を目指す研究留学まで多様です。海外の大学に進学する選択肢は中高生向けに話になりますので、これは今回とは別の話だと思ってください。さて、ここに挙げた種類の中で、最もハードルが低いのは語学留学です。なぜなら、その他の留学は、ある程度語学ができる前提で行うものであり、言葉に壁があると成功させることは難しいからです。語学留学は英語の初心者でも挑戦することができます。

語学留学というと、ビギナー向けというイメージがあるかもしれませんが、実は語学留学も捨てたものではありません。特に、外国の文化を見たり、現地の生活をしっかり感じるうえでは、むしろ語学留学が最適かもしれないのです。語学留学であれば様々な人々との交流にも沢山の時間を費やすこともできます。私の経験から言えるのは、研究留学をするととても忙しくなり、現地の大学や協力組織とのやりとりや、調査を行ううえでの準備、実際の調査にかかる手間、様々な人への説明、意見交換、取りまとめや記録など、大幅に時間を取られてしまいます。結果、あまりゆっくりと異文化を楽しむ時間が取れないという側面もあるのです。押しなべて「留学」のひと言で括られがちですが、留学の種類によって目的も変わりますし、大学生と研究者ではフォーカスするべき事柄も大きく違うはずなのです。

海外で異文化を肌で感じるために、街を歩いたり、人々と話をしたり、食事を共にしたり、さまざまな食材を使ってみたりするには、初めは語学留学ぐらい余裕がある方がいいと思います。また、現地の人ばかりでなく多国籍の人と交わることができるのも語学留学の良いところで、一度にさまざまな国籍の人々、様々な宗教の人々、それぞれ世界中の全く異なる地から来た人々と沢山のコミュニケーションをとることができます。

例えばサウジアラビアは鎖国政策をとっているので、日本人が入ることはできません。彼らがどんな生活をしているのか、通常うかがい知ることはできないのです。しかし、私はダブリンにあるサウジアラビア人専用寮に招いてもらったことがあり、彼らの生活ぶりや食文化、そして祈る姿まで、つぶさに見ることができました。そして文化や世界観の違いにひどく衝撃を受けたのもこの晩のことです。このときの話は11月の定例講座でお話ししようと思いますが、このように、これまでの生活では決して経験できなかったことを経験できたり、出会うことがなかった人々と夜遅くまで互いの身の上話をしたり、食事を作り合ったり、人生について語り合ったりすることは、何ものにも代え難い経験になります。きっとあなたには地球の裏側に、いや、地球上の様々な場所に友人ができるでしょう。そしてその友人関係はこの先もずっと続くのです。

語学留学も自分のアクション次第で大きな収穫があることがご理解いただけましたでしょうか。それに、英語の習得も本気でやるなら、毎日多くの復習が必要になります。こう考えると語学留学だけでも充分に充実した日々が送れますし、むしろ発見と驚きに満ちた海外生活を送ることが可能なのです。

英語は世界を無限に広げるツール

また、英語という言語が極めて優秀な言語だということは生活する中で痛感するはずです。特に非英語圏を旅したときに英語の便利さを痛感し、意思の疎通ができることがどれだけ安心感をもたらすのか、よく分かると思います。

意思の疎通が自由にできるだけで、行動範囲は大きく広がります。とくに初めは言葉が通じるというそれだけのことを、とても嬉しく感じると思います。それは意思の疎通が可能な人の範囲が、一気に広がったことを実感するからでしょう。これまで日本語を話せる人に限られていたコミュニケーションの範囲が、第二言語によって世界中に生きる数知れない人々へと無限に広がるのです。

また、留学中は小さなトラブルや分からないことが続出します。部屋の電球が切れたとか、排水溝が詰まったとか、生活上必要な注文はきちんと伝えなければなりませんし、英語で電話をしなければならない局面もあるかもしれません。また、ランドリーの使い方やイベントへの参加など、分からないことを聞いたり、やってみたいことのやり方を聞いたり、これらをすべて英語で行うことになります。海外生活において、英語は生きるうえで欠かせないツールであり、行動範囲を広げるための道具でもあります。そして、こうした局面を英語で切り抜けていくたびに、あなたの英語力は上がっていくのです。疑問も不安も困りごとも、すべて解消してくれるのが英語です。海外において英語とお金は本当に便利な道具なのです。

一方で、英語の習得は一筋縄ではいきません。どこまでやっても、ネイティブと同じレベルに到達することはなかなか難しいことなのです。しかしこれは裏返せば、自分の英語力のレベルが上がっていっても上達を実感し続けることができるということでもあります。そして今日覚えた表現がすぐに使えるのも英語のいい点です。人間はできなかったことができるようになることに大きな喜びを感じる生き物です。やり甲斐を失わずに続けられるという意味では、英語はモチベーションを維持しやすいのです。

日本のことをどれだけ話せるか

留学中に様々な国の人たちとコミュニケーションをとるとき、まず話題となるのはお互いの国の話です。相手にとってあなたは日本代表であり、あなたにいろいろなことを聞いてみたいと思っているはず。近年日本はヨーロッパでも人気の観光地となり、京都や奈良を訪れてみたいというヨーロッパ人はとても増えています。こんなふうに日本には外国人が興味を持ってくれるものがある。これは話のきっかけが存在することにほかなりません。ラッキーなことなのです。これを生かさない手はありません。

海外では、自国のアイデンティティーをしっかり持っていることは非常に重要です。自分の国のことを語れない人は、一種の根なし草だとみなされて信用してもらえませんし、基礎的な教養がないと判断されてしまいます。せめて自分の国のことくらいはしっかりと説明できる知識をつけていきたいですね。

しかし、知っているつもりになっている日本のことですが、実は知らないこと、これまで考えてもいなかったことが沢山あるはずです。日本について話すことは、そんなに簡単なことではありません。以前、スペイン人の学生が日本の女子大学生に日本の宗教について質問をしているのを目にしたことがあります。ところが、その女子学生は「んー、知らない!日本には宗教はない!」と答え、笑って誤魔化してしまいました。しかし、キリスト教やイスラム教など、一神教の国の人たちにとって、宗教はその人の文化的バックグラウンドとして相手を判断する極めて重要なファクターです。このスペイン人は、「日本の学生は日本のことを聞いても何も答えられない。頭が空っぽだ」と私に言いました。私はとても恥ずかしく思いましたし、彼女の代わりに彼の聞きたいことを一通り説明をしましたが、残念ながらこれが日本の多くの学生の現実だと思います。やはりこれではダメなのです。

留学に行っても観光気分でいる学生も確かにいます。日本を正確に発信できない人も沢山います。留学に軽薄なイメージがあるのはこうした局面ではないかと思います。この記事は留学を勧める記事ですが、やはり目的もなく、漠然と自分探しに出るだけの留学はみっともないのでやめた方がいいと思います。ましてやせっかく海外にいるのに日本人でつるんで遊び回っているだけでは、時間と金と環境の無駄遣いにほかなりません。第一、どこまで異国の奥の奥が見られるのか、どこまでバックグラウンドの違う人たちの内在論理に迫ることができるのか、本気で挑戦しなかったら楽しくないじゃないですか!

日本のこと、世界のことをしっかり学んでいくところから留学は始まります。異世界から得るばかりではなく、日本を発信する力。世界共通の知を共有する力。そんな教養を身につけていきましょう。

たとえば「京都について話をする」なら

彼らが日本について聞いてくることの中で、最近比較的よく話題にのぼることのひとつは京都についてです。伏見稲荷や金閣寺の写真を見て、ぜひ京都を訪れたいという外国人はとても増えています。では、あなたは京都についてどのぐらい話してあげられるでしょうか?彼らと話をするうえで、私たちは京都についてどのくらい知っていればいいのでしょう。彼らが京都について聞いてくるとき、必ず神社やお寺の話になるはずです。そのときに、有名な寺社を並べるだけでは意味がありません。そんなことはネットにいくらでも出ているからです。彼らが日本人に聞きたいのはその先の話です。

神社や寺は、日本においてどのような意味を持つ場所なのか、彼らの興味は必ずそこにいくはずです。仏教寺院はアジア各地に存在するので、ある程度知られていますが、神社については完全に日本に独特のものであり、日本人以外誰も知りません。私たち日本人が神道について知っておくこと、正確に説明することは非常に重要なのです。

まず神道とはどのような宗教なのか、多神教と一神教の本質的な違いは何なのか、自然信仰とはどのようなものか、晴れと穢れとは何か、神道の世界観は日本人の気質にどう影響しているのか、なぜ日本には仏教と神道が同居し、互いにどのような関係なのか‥‥。そして、キリスト教圏やイスラム圏の人々にこれを正確に理解してもらうためには、日本の神と一神教の神の、「神」という概念の違いを説明できなくてはなりません。そのためには一神教のことも知らなければなりません。日本人にとっての神とはどのような存在なのか、おそらく相手が知りたいのはここの部分です。神の捉え方というのは、その共同体の世界観に深く関係しているからです。特に神々がこの世界に沢山存在する世界観や、ときに寺の中に神社があったりするような異なる宗教施設が同居する状況というのは、彼らにとって訳がわからないことなのです。同時に、あなたがこれをきっちりと説明できるのかどうか、そこを相手は見ています。グローバル世界において、教養の深さは相手を判断する大きなファクターだからです。

また、京都について話をするなら、京都の古都としてのアイデンティティーについての説明も不可欠でしょう。京都はどのような歴史を歩み、日本の中でどのような位置づけの土地なのか。京都は御所の存在を抜きに語れませんから、天皇や皇室、貴族についても説明しなければなりません。歴代の為政者についても話すべきでしょう。話は武士道や日本人の倫理観にもおよぶかもしれません。また観光を前提にするのなら、有名観光地である東山とはどのような意味を持つ場所なのか。伏見稲荷や金閣寺、嵐山などの彼らがまず行ってみたい場所の説明もできなくてはいけない。枯山水の話をするなら、その様式美や「侘び寂び」、できれば禅についても語れたほうがよいですよね。

京都独自の「文化」も、京都の大事なアイデンティティーです。芸妓文化、懐石料理やその他の京料理の話、またお寺ではお抹茶とお菓子を楽しめる場所もありますから、茶道についても話ができるほうがいい。もちろん交通網や現代の京都についても説明したいところです。京都旅行には何日くらい必要なのか?名物は何か?なぜ京都には名水が多いのか?奈良と京都の関係は?なぜ西洋の城とは違い、御所には堀も城壁もないのか?

お分かりでしょうか。分かっているつもりになっている日本のこと。でも、改めて海外で日本について話をすることを想定すると、知らないことだらけだということに気づくはずです。京都一つとってもこれだけの話になるのですから。でもこれだけのことがきちんと英語でやりとりできたら楽しいはずですよ!

いやぁ、これは大変だとすっかり気後れしてしまった方もいるかもしれません。もちろんこれらのことが一通り話せるようになるには、付け焼き刃の知識では太刀打ちできません。でもこれが留学の意義を本当に高めていくコツなのです。自分が面白いと思って学んだことでないと、人に面白いと思ってもらえるように話すことはできませんよね。そしてとにかくたくさんの人々と積極的にコミュニケーションをとるように積極的に行動することです。

それに教養を広げることはそんな大変なことではないんです。普段から楽しみながら教養を身につける学びを重ねているかどうか。例えばあなた自身が京都に行ったときに、知的好奇心を広げて、歴史や文化をリアルに感じながら旅を楽しんでいるかどうか。蛤御門に行ったら、弾痕を見るだけではなく、門の内外に対峙した幕府軍と長州の軍勢を想像してみてください。そしていざ乱戦になった様子を想像してみてください。伏見の寺田屋に行ったら捕り方に囲まれた龍馬と、捕縛しようとする役人たちとの競り合いをリアルに想像してみてください。三条木屋町には佐久間象山遭難の石碑があり、そこからわずかに西側には池田屋の跡があります。それぞれどんな光景が繰り広げられたのか。楽しんで考えたことや学んだことは自分の中に残っていきます。

要は学びを楽しめれば良いだけの話。義務の学びは苦行ですが、楽しい学びは遊びと境界線がありません。そして知的好奇心をもって学んだことは、それをあなたが誰かに話すときも必ず楽しく伝えることができるはずです。そして、こうした話を相手に深く伝えられれば伝えられるほど、相手はあなたの話に惹きつけられ、日本に深い興味を持ち、あなた自身への興味と信頼に変わっていきます。あなたが人に与えるられるものが多いほど、彼らがあなたに与えてくれるものも大きくなる。それは最終的に、あなたの留学の価値をどこまでも高めてくれるはずです。

要は教養を楽しみながら徹底的に身につけること。日本のことばかりでなく、西洋哲学なども海外では大事な共通語になります。どうでしょう。留学準備にもなる教養の学び、ぜひ楽しみながら始めてみませんか?ぜひ定例講座に気軽に足を運んでみてください。

いかがでしたでしょうか。今回は前編として、留学のもつ真価と意味について、改めて深く考えてみました。語学留学はまったく捨てたものではないということを説明しました。また、同じ期間、同じ場所に留学するにしても、自分の準備とアクション次第で、留学の価値は何倍にも何十倍にも膨らむということがご理解いただけたかと思います。

次回は後編として、大人の留学と大学生の留学について、そして留学を行うための準備や手続き、英語学習についてといった、具体的な話をお伝えしていきたいと思います。

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