中村 仁 / Jin Nakamura

2010年、東京理科大学理工学部を卒業後、株式会社ネットプロテクションズに新卒入社。2015年にIT系ベンチャー企業に転職し事業売却を経験。2019年に不動産DXを手掛ける株式会社スマカリを設立。株式会社ネットプロテクションズの役員補佐を兼務。私立高校でキャリア教育授業を担当し、2023年、外苑ソーシャルアカデミーのインキュベーションフェローに就任。

座右の銘は「流水腐らず戸枢螻せず」(常に流れる水は腐ることがなく、開き戸の軸は虫に食われることがない。常に活動しているものには腐敗がないというたとえ。)

中村仁からのメッセージ

2004年、アメリカフロリダ州にハリケーンが直撃し、22人の命が奪われ、110億ドルの被害が生じました。

被害を受けた人々は生活必需品の調達や家財の修理に追われますが、業者達は値段と吊り上げ、それが社会問題に発展しました。

多くのフロリダ住民が物価の高騰に憤りを隠しませんでした。フロリダ州には便乗値上げを禁じる法律があるため裁判で勝訴となったものもありました。

ところが、一部の経済学者はその法律や一般市民の怒りは見当違いだと論じました。

経済学者トーマス・ソーウェルは「氷、ボトル飲料、屋根の修理代、発電機、ホテルの宿泊代が高くなるおかげで、こうした財やサービスの消費が抑えられる一方、業者にはこれらをより多く提供するインセンティブが生じることになる。」と述べました。

評論家ジェフ・ジャコビーは「市場でつく価格を請求することは暴利行為ではなく、自由な社会で財やサービスが分配される仕組みだ。値上げに憤りを感じるのは理解できるが、フロリダの早期復興という大きなメリットをもたらすことも事実だ。」と述べました。

これらに対して、クライスト司法長官は「人びとが自然災害で苦しんでいるときに、良心に照らして不当な価格を請求されているとすれば、政府はそれを傍観するわけにはいかない。」と述べました。

この話はマイケル・サンデルの著書『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)の冒頭で紹介されている実話で、倫理的正義と経済学的正義が対立した事例です。

このような事例は枚挙にいとまがなく、およそ人間が関わるほぼ全ての出来事は一方向からの評価で片づけられるものではありません。

より良い日本、より良い世界を作るためには、メディアの情報や世の中の雰囲気に流されるのではなく、一人ひとりが物事を多面的に捉え、物事の本質を見出して行動する必要があります。

現代は社会で活躍する個々人の活動が社会のあり方に強い影響を与えています。家族や友人、同僚との何気ない会話や行動が、やがてバタフライ・エフェクトの如く大きな波となって社会に現れるのです。

外苑ソーシャルアカデミーはいわゆる「教科書的な正解」を教える場ではなく、「様々な見方ができる問題」についてタブーを排除した空間で率直な意見交換を行い、日本社会を建て直すために必要なこと、未来を生き抜く視点、社会のために自らができることを皆で模索する場です。

発見と探求を望む全ての学生、社会人に門戸が開かれております。ご興味を持たれましたら、是非お気軽にご参加ください。