こんにちは、GSAの山田です。日本は暑い日が続いていますね。田舎にいると蝉しぐれや蛙の声、蚊取り線香の匂いや、よく冷えた西瓜の味など、日本の夏の独特の雰囲気を感じる季節です。せっかくですから日本の夏を楽しむことを考えたいものです。
夏も盛りのこの時期、近所の農産物直売所には、夏野菜や葉物野菜が沢山並ぶいい季節を迎えています。太陽の光を浴びて育った濃い緑の夏野菜。この時期は夏バテで食が細くなる人もいるようですが、新鮮な夏野菜を沢山食べられる時期でもあります。
野菜は収穫してからの時間で味が大きく変わります。採ったばかりの夏野菜は青々とした艶があり、パリッと固く締まっています。そして自然の甘みがあり、どんな食べ方をしても美味しい。道の駅で買うのもいいですが、自分で育てられたらさらに新鮮な野菜が味わえます。今回はそんな夏野菜も含め、趣味の農業の面白さについてお伝えしたいと思います。
農業は眠っていた感覚を呼び覚ます
都会の生活を続けていると、木々の緑や風の音、土の感触といった自然の手触りから離れてしまいます。私もかつてはタワーマンションの高層階に住み、都心で仕事をして、生活の全てが都内中心部で完結していました。その生活はスタイリッシュで便利だったかもしれませんが、24時間逃げ場のない都会の生活は、見えない心の疲れや周辺環境への飽きがストレスとして溜まり、知らぬ間に自然に触れることを求めていたように思います。
いまは少し田舎に移り、自然の色、音、匂い、手触りの中で生活ができるようになりましたが、そんな環境の中で小さな農園を作ることがとても楽しい時間になっています。もちろん都心のマンションでもプランターなどを使えば、規模は違えど同じような楽しみが味わえるでしょう。農園づくりは都会の生活に自然の営みを取り込むことでもあるのです。
土の手触りを感じてみる
私の家には小さな庭があります。ところがこの地域の土は、粘土質で水はけが悪く、しかも大小の石がゴロゴロ入っていて、お世辞にも農業に向いた土とは言えません。しかし、庭いじり自体が都会者にとっては新鮮で、雑草を抜いたり土の質を柔らかく改善するのはなかなか面白い作業です。土をあらためて触ると、懐かしさと土の温かさが指から伝わってきます。
今の家に入居して以来、土を掘り、ふるいにかけて大量の石を取り除き、さらには土をふわふわにするために、少しずつ腐葉土や落ち葉などを混ぜ込んでいきました。土に触れる作業をすること自体が、都会の生活の中では眠っていた野生の感覚を呼び起こしてくれるのです。そしてそこに野菜の苗を植えて育てていきます。農業はやってみると日々変化があるところが実に面白いです。
もちろんベランダにプランターボックスを置いてやってもいいと思います。その場合はぜひ大きめのプランターをいくつか使ってやってみてください。プランターや土などの農業資材はホームセンターに売っていますし、苗もホームセンターや花屋さんに売っています。また春から夏にかけて農産物直売所やJAなどの店先に沢山の種類が並び、なかなか壮観です。色々な種類があるので、見ていて楽しくなります。ぜひネット等で調べてみてください。
初めて農業に挑戦するなら
広大な土地があるなら何を育ててもいいのですが、たとえば私の家の庭の畑スペースは、せいぜい畳4枚分程度。限られたスペースで栽培するのであれば、最大限利用価値の高い作物は何かを考えることが大事です。これはマンションのベランダでのプランター栽培でも同じです。
限られたスペースで育てるなら、使う頻度が高く、長く収穫できるもの。そして栽培しやすいもの。その筆頭はハーブ類でしょう。バジルやオレガノ、ローズマリーなどは料理に使うたびに買うと結構な金額になります。しかし、庭にひと株ふた株植えておけば、かなり長い期間使うことができます。
私の庭にあるハーブ類は、バジル、イタリアンパセリ、タイム、オレガノ、セージ、ローズマリー、レモングラス、それにミントが3種類。水さえしっかり与えれば、どれもほとんど放ったらかしでも育つ作物が多いです。この中ではバジルが一番虫には弱いかもしれません。ローズマリーなどは多年生で使い勝手も良いので、一度植えたら本当にずっと使えます。
ローズマリーは鶏や豚肉のローストや、アクアパッツァなどのイタリアンには欠かせません。魚にも相性がよく、本格的な洋食らしい香りが楽しめます。ひと株植えておくだけで何年もよい香りを楽しむことができます。鉢植えでもいいのではないでしょうか。
とにかく、ハーブ類は何かと使う頻度も高いので、狭いスペースで育てるならおすすめです。
育てやすい夏野菜は?
初心者でも失敗しにくい作物、ほぼ放置していても育ちやすい作物を挙げるなら、そのひとつはゴーヤです。
害虫もつきにくく、ツルをどんどん伸ばし、早くから花が咲き始めます。もちろん適度にツルを伸ばしたら、その先端を切り取って(摘心といいます)脇芽のツルを増やしていったり、適度に肥料を追加してあげることで収穫量が大きく上がりますが、最悪放置しても実を収穫することができるのではないかと思います。ただしゴーヤは実の小さな品種も多いので、大きな実のなる品種を選びましょう。
また同じく育てやすいのは唐辛子です。タカノツメなどはやはり害虫も少ないですし、夏から秋にかけて次々と花を咲かせて青い唐辛子が出来てきます。
私も常時6〜7株植えていますが、特に若い青唐辛子は香りも良いので料理によく使います。青唐辛子には新鮮な緑の香りと、鮮烈な辛さがあり、ステーキや豆腐、そうめんやうどんの薬味として、また中華炒めやスパイスカレーに入れたり、柚子胡椒の材料にするなど、とにかく活躍の場が広いのです。もちろん刈り取らずに赤く熟すのを待って、それを乾燥させれば保存のきくいわゆる唐辛子にもなります。
夏野菜の定番といえば
育てやすく、収穫が見込め、少し長めに楽しめる夏野菜といえば、トマトやオクラなどしょう。樹上でしっかり熟したトマトはやはり味の濃さがちがいます。また、採りたてのオクラの歯応えは、スーパーで買ったものとは比較になりません。
トマトはミニトマトも含めて、定期的に肥料を与えていけば、何度も収穫できます。ただし、思っている以上に草丈が大きくなりますので、しっかりと茎を上に伸ばしながら、コンスタントに収穫していけると長く楽しむことができます。
オクラも比較的害虫に強く、作りやすい作物です。カイガラムシがつくことがありますが、仮についたとしても、ベニカなどの基本的な殺虫剤で抑えることができます。ちなみにオクラは花が綺麗なことでも知られています。
また、採りたてのオクラを熱湯で15秒ほど茹でて小口切りにしたものをよせ豆腐などの薬味にすると、スーパーなどで買ったものとは全く違うシャキシャキした歯応えが楽しめます。
他にも成長旺盛なアシタバやピーマンなども楽しいですし、水を頻繁にやらなければなりませんがナスも収穫が嬉しい野菜です。またスイカやメロン、ブルーベリーなどのフルーツに挑戦するのも面白いですよ。
家庭農園のちょっとしたコツと効能
農業でまず肝心なのは苗選びです。農業には種子から育てる方法と苗を買ってきて育てる方法があり、種子を買った方がはるかに割安ですが、苗から育てた方が根を張らせてから定植するような手間がかからず、ずっと成功しやすいと思います。初めは苗から始めるのがお勧めです。
苗を買う時は、できるだけ勢いのあるものを選んでください。弱々しい苗や、葉が黄色くなりかけているものは避けましょう。初めから勢いがない苗は、生命力を取り戻すところから始めなければならず、そのまま枯れてしまうこともあります。特に売れ残りの苗はお勧めしません。
苗を植えるときには、苗より下の土中に肥料を入れておきましょう。最初は化学肥料でも構いません。有機農業に挑戦してもいいですが、虫やにおいの問題もあり、まずは育て方の基本を抑えるほうが良いと思います。有機農業は慣れてから挑戦するのがいいでしょう。
葉が元気で茎が太く、真っ直ぐに生えているような苗は、みるみる成長していきます。特に5月以降の夏場は日々植物が大きくなり、茎の分岐が増え、やがて花芽をつけて実がなっていく、その過程を楽しみながら育てていきましょう。植物は枯れたら元には戻りませんので、特にプランターの場合は水やりをこまめに行う必要がありますが、楽しくなってくると水やりも面倒ではなくなります。また庭に地植えする場合は、水をたくさん必要とする作物や、よほど土が乾かない限りは、特に水やりをしないでも野菜は育っていきます。
これは庭木にゴーヤや山芋、マクワウリ、メロンのツルが伸び放題になった状態。夏にはこんなカオスになりますが、農業は植物の生命力を引き出すだけでなく、その力を見守りながら、私たち人間がもつ野生の力を呼び起こす様々なクオリアに溢れています。土の手触りを感じ、気候に敏感になり、四季を感じ、生きた作物を味わうこと。人間も本来は自然の中で生きていた動物ですので、自然と一体となっておこなう趣味は、心や身体が潜在的に欲しているから楽しいのだと思います。そして、自分で野菜を育てて収穫すると、今までスーパーで買っていた野菜一つ一つをずっとよく知ることができ、大切に味わうことをになるでしょう。さらには農業後継者不足や高齢化、耕作放棄地の多さ、食糧自給率の低さといった問題にも敏感になるはずです。
秋からは水菜や白菜、ブロッコリーなどの冬野菜の植え付けが始まります。一年中楽しめる農業。あなたもぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。詳しいことや質問があれば、イベントや講座のときにでも私に直接聞いてくださいね。
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