ポルトガルの首都リスボンを歩く旅(後編)リスボンで味わうポルトガルの郷土料理

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著者 : 岡田麻衣(GSAアソシエート・フェロー)

前編ではリスボンの街歩きや、ぜひ訪れていただきたいおすすめの場所についてお伝えした。後編となる今回は、リスボンの食に焦点を当てていきたい。旅の大きな楽しみの一つは食べること。郷土料理や食文化は、その土地を身体で理解する最も有効な方法の一つだ。特にポルトガル料理は素材の味を存分に引き出した調理法が特徴。ここではそんなポルトガル料理から、ぜひ試していただきたい一皿をいくつかご紹介していきたい。

レストラン “Tu e Eu”

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リスボン観光の際に、是非訪れてほしいレストランの一つ「Tu e Eu」。店名を日本語に訳すと「あなたと私」という意味であるが、切り盛りをしているのはポルトガル人のおばあちゃんだ。

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おばあちゃんには愛する人がいたが、突然別れることに。その愛は朽ちることなく40年続いていて、いつかリスボンに戻った彼がお店の評判を聞き、訪ねてきた彼と会える日をこの店の中で心待ちにしている。そんなおばあちゃんの愛が込められたレストランでは、以下でご紹介していく干鱈料理や、シーフードのグリルをいただくことができる。こぢんまりとしたお店のため、行列に並ぶのは必至だが、その価値は確実にあって、裏切られることはない。

バーリャカウ(干鱈)料理

この店で食べることができる名物の一つが干鱈の料理だ。海に囲まれたポルトガルでは常に新鮮な海の幸が手に入るが、なぜ新鮮なものを料理せずにわざわざ“干す“のか、と思う方もいることだろう。

干鱈はポルトガルの歴史と不可分な食べ物である。15世紀の大航海時代、長旅の中でも保存がきくタンパク源として開発され、船乗りたちに重宝されてきたのだ。保存食としての役割を果たしてきたのはもちろんだが、その美味しさから長い間国民から愛され続け、さらに貿易品として世界へ広がっていった。料理をする際には一日かけて塩抜きをしていくが、その塩梅によってレストランのシェフの腕前が試されるそうだ。

バカリャウ・ア・ブラス

そんな干鱈を使った国民食の一つである、バカリャウ・ア・ブラス(干鱈とポテトの卵とじ)を紹介する。これは干鱈とオニオン、細かく切ってサクサクに揚げたポテトを炒め、卵でとじた一品である。

見た目の優しそうな色合いとは裏腹に、しっかりとしたチップスの味わいや干鱈の塩味、そこにオニオンの甘みが調和し、それを卵が優しく包み込むんで全体をまとめている。トッピングとしてオリーブがのっているが、それがまたアクセントになり、“味変“を楽しみながらいただける一品だ。味だけでなく食感も大いに楽しめ、干鱈はほろほろとしながらもしっとりとしており、そこにチップスのサクサクしたアクセントが入る。運ばれてきた瞬間はその大きさに驚いたが、飽きずにぺろりといただいてしまった。

アローシュ・デ・ポルヴォ(タコご飯)

さて次にご紹介する店は、Granja Velha。この店も地元の美味しいレストランとして、常にリスボンっ子で賑わっている人気の食堂である。

ここでは、ポルトガルの家庭でもレストランでも出される定番の料理として親しまれているアローシュ・デ・ポルヴォを食べることができる。これはヨーロッパでは珍しく、タコを食べるポルトガル国民に愛されている一品だ。

アローシュ・デ・ポルヴォには、炊き込みご飯のようなタイプもあれば、雑炊のようにスープたっぷりのものもある。今回の旅ではスープが多いタイプのものを試してみた。2人分から注文できるこちらの料理であるが、グツグツと煮えたぎった鉄鍋ごとテーブルに運ばれてくる。このタコご飯、見た目は一見雑炊に似ているが、目に入るのはプリプリのエビやタコ、そして出汁をたっぷりと吸い込んだお米である。

お皿によそい、一口食べた途端…‥エビやシーフードのうまみが凝縮された濃厚なスープと香ばしいガーリックが口いっぱいに広がり、猛然と食欲を掻き立てる。肝心のタコはフワフワとした柔らかな食感ながらもしっかりと食べ応えがある。まさにポルトガル流の素材の味を生かした海の幸の食べ方だ。鉄の鍋に入ってるので冷めることもなく、最後までおいしくいただくことができた。これは長い海岸線を持つポルトガルの豊かな海の恵みを見せつけられる一皿だ。ポルトガルを訪れた際は必ず試していただきたい一品である。

絶品スイーツ パステル・デ・ナタ

最後はポルトガルで長い間愛されているスイーツ、パステル・デ・ナタを紹介したい。一般的にパステル・デ・ナタは朝食やおやつとして食べられている。アジア、特にマカオでも人気の「エッグタルト」と同じような見た目をしているが、エッグタルトはマカオがポルトガルの植民地だったころにパステル・デ・ナタをアレンジしてできたものだそうだ。

しっかりとしたタルト生地のマカオエッグタルトに比べて、ポルトガルの物は何層にもパイ生地が重なっており、サクサクとした食感が楽しめる。フィリングは濃厚なカスタードで、卵の優しい味と滑らかな口当たりがハーモニーを奏でている。

カフェやパン屋さんに入れば必ずナタを見つけることができるくらいポピュラーなスイーツだが、お店によって味や食感が少しずつ異なっている。シナモンが強めの店もあればカスタードが濃厚な店もあり、「はしごナタ」で食べ比べをしながら好みのナタを探し出すのも面白い。ちなみに私はクリームが強めの老舗のものが好きだったが、友人は甘さが強めのナタ専門店が好みだったそう。

さて、いかがだっただろうか。ポルトガルの食は海の恵を中心に、食材の素晴らしさをしっかりと引き出した料理ばかりだ。今回ご紹介したのは美しい盛りつけとは無縁の、飾り気のない料理ばかりだが、どの料理も地元の人々とともにある郷土の味である。その味は食べることや味わうことが人生の喜びであることを教えてくれるような美味しい料理ばかりなのである。

あなたも地元の人々に愛されるリスボンの小さな食堂で、ポルトガルをまるごと味わってみてはどうだろう?ぜひポルトガルをあなたの旅の選択肢に入れてみてほしい。

さて、私の所属する外苑ソーシャルアカデミーでは、海外の歩き方や異文化を探求するイベントを開いている。こうしたテーマが好きな方ならどなたでも大歓迎なので、ぜひ気軽に参加していただきたい。必ずや異文化理解の知見と好奇心が深まり、次はさらに楽しい旅が作れるはずだ。ご興味のある方は、本ホームページ上の定例講座のページをチェックしてみてほしい。

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