効率的な読書術(後編)

こんにちは。外苑ソーシャルアカデミーの山田です。今回は前回に引き続き、効率的な読書術の後編をお伝えしていきます。

前編の内容は概ね以下のようなことでした。

◉本の読み方を知る。難しい本は、小説とは読み方が違う。

◉本の選び方・買い方を知る。本は厳選することが死活的に重要。

◉何を読み、何を読まないようにするかを決める。

◉本をカテゴリー分けして、それぞれ読み方を変える。

◉自分の本にはためらわず書き込んで構わない。

そして、後編は概ね以下のことをお伝えしていきます。

本の選び方 自分は何に疑問を持っているのか、何を知りたいのかにフォーカスする

幅広い教養を身につけたい、なおかつ教養としてある程度通用するレベルの知識をつけたいと考えたときに、まず最初は何から読み始めればいいか迷うと思います。特にこれから本格的に読書生活を始めようという方はなかなか見当がつかないかもしれません。たしかに網羅的に知識を身につけることは理想かもしれませんが、読書は楽しくなければ意味がありませんし、身につきません。読書の本質は楽しいこと。これを忘れないようにしましょう。

読む本を決めるうえで一番大切なことは、自分がいま何に最も関心があるのかを明確にすることです。日本の歴史を知りたいのか、西洋史をやりたいのか、宗教について知りたいのか、哲学を学んでみたいのか、経済をやりたいのか、外交問題を知りたいのか、教育問題に詳しくなりたいのか、環境問題に興味があるのか、科学技術について知りたいのか・・・。

つまり、知りたいという気持ちが強いテーマ、読み進むごとに発見や驚きが多く、自分の知が充填されていくような感覚が得られる1冊を選ぶことが大切です。この1冊さえ見つかればそれを読む進むうちに、次に読みたいもの、考えていきたいテーマがどんどん生まれてきます。読み終わったら次の本へとすぐに手が伸びるに違いありません。その後もあなたの読書はコンスタントに続くはずです。読書をライフワークとするうえで、この一冊を見つけることがその後の読書生活を左右する非常に大きな分岐点になると思います。

特にその分野の中で、自分は具体的にどんな疑問を持っているのか、何を知りたいのか。できるだけ細かいところにフォーカスすることが、より興味を深掘りしながら本に向き合うことにつながります。ぜひ買う前に少し下調べをしましょう。前回お伝えしましたように、一生のうちに読める本には限りがあり、一冊一冊を厳選することが死活的に重要です。私はジャケ買いは絶対にしませんし、レビューだけで購入することもしないという話も書きました。私は基本的に本屋で中を確かめてから購入します。ネットで買う場合も、稀にありますが、それは決して多くありません。図書館などで中身をしっかり確かめた場合や、どちらにしろ取り寄せが必要な場合、そして絶版の本などは仕方なくネットで買うことがあります。しかし原則的には本屋さんで現物を手にして、面白いか、発見が沢山ありそうか、興味深く読み進められそうかを確かめます。その方が間違いのない本との良い出会いご得られるからです。

ちなみに情報ゼロで本屋さんに行って1から探しても構いませんが、あまり効率的ではありません。だいたい本を読んでいるうちに次に読む本のアタリがついてきます。それを下調べします。数冊概ねの見当をつけて本屋に向かいます。私の場合、一冊ごとにそこそこ時間をかけて見極めるので、購入する本が4、5冊手元のカゴに入る頃には、それなりに体力を消耗品しています。ちなみに、ネットの方が多少安く買えることもありますが、私は本屋さんで中身を確かめたら、必ずその本屋さんで買うことにしています。最近大型書店はどんどんなくなっており、現物を見極める場である本屋さんにはぜひ末長く存続してほしいからです。大型書店というのは本来読書家にとって絶対に必要な施設です。長い目で見たら、本屋さんが存続してくれる方がはるかに有益だと思います。それに本屋にいる時間は、読書家にとって、理屈抜きに幸せな時間ですから。

もちろん下調べにネット上のレビューを参考にするのは構いません。また本に詳しい人におすすめを聞くのもいいでしょう。名著とよばれるものから選んでもいいと思います。ただし、レビューの評価がどんなに高くても、あるいは名著として名高いとしても、いずれもあなたに合うかどうかは別問題です。自分の目で確かめたものが一番信用できるのです。

さて、ではどんな本から選んでいくか。比較的ハズレが少なく、私がお勧めするのは新書です。新書は様々な領域を網羅しているうえ、専門家が解説しているのでそれなりに中身が確かで、なおかつ表現も平易なものが多いです。ただ、著者との相性はあると思います。そこだけは原物を手にしてきっちり確かめたほうがいいでしょう。

「この本をずっと読んでいたい」「ずっと終わらなければいいのに」と思える本に、一冊でも多く出会えるということが肝心です。

もしも、自分が何に興味をもっているのかという段階からよく分からない、選択が難しい、何が知りたいかすら分からないという人には、定例講座に来ていただいた際に、私たちがおすすめする本をお伝えすることは可能ですので、お気軽にお声がけください。

学術書は最初の一冊を熟読する

学術書を読むのは、新書や教養書よりもはるかに難解です。例えば、岩波文庫に網羅されている思想家の原著は、難解なものが少なくありませんので、読破するにはそれなりにハードルが上がります。こうした本を初めから手にする必要はありませんし、解説書から入る方が読み進みやすくなることが多いと思います。

たとえば西洋思想の場合を考えてみましょう。西洋思想には歴史の時間軸があります。歴史の転換点をごく大雑把に考えても、古代ギリシャからスタートして、キリスト教の影響や、中世、ルネサンス、近代、現代と、それぞれ様々な思想が誕生しました。古代から勉強をスタートするのも一つのやり方ではありますし、ざっくりと哲学史を頭に入れてからスタートする方法もあります。

ただ、思想にはあなたと相性の良い著者と、あまり興味を惹かれない著者があると思います。古代から順に学ぶのもいいのですが、おすすめは一番興味を惹かれる著者の一冊を選ぶことです。比較的入りやすいのはデカルトやフーコー、ニーチェ、などでしょうか。カントは最初少し分かりにくいかもしれませんが、ひとまず純粋理性批判は取り組む価値は確実にあると思います。またレヴィ=ストロースなども前後の哲学とつながりがいいと思います。ウィトゲンシュタインはとても難しいですが、理解すると世界の形が違ったものに見えてきます。デリダ、ドゥルーズなどもいきなり読むのは結構難しいと思います。いずれも難解なものは解説書から入るといいと思います。

あるいは、哲学者の言葉から入るのも一つの取り組ま方です。たとえば、ソクラテスの「無知の知」とはどういう意味なのか。デカルトの「我思う。ゆえに我あり」とは何のことか。ウィトゲンシュタインの「語り得ぬものには沈黙しなければならない」とは何事なのか。もしくは、ニーチェのニヒリズムとは何なのか。こうしたことを1つ徹底的に知りたいということもいいモチベーションだと思います。

こうした本を選んだら(解説書でもいいですから)、まず一冊、丁寧に熟読して、その本を完全に自分のものにすることがとても大事です。数ヶ月かかっても構いません。とにかく著者の考えを徹底的に理解することです。それができると、その一冊が基準点になり、そこから前後に次に読むべき本が広がっていきます。

学術書には原著だけでは、まず理解できない本が数多くあります。哲学の場合、解説書から読み始めることは有効な手段です。論文を書くのでなければ、原著はひとまず置いておいて、解説書だけ読んでいってもいいでしょう。解説書でも十分難しく感じることがあると思います。

読書は、少し背伸びをしても構いません。しかし、背伸びのし過ぎは挫折するだけですので、モチベーションが下がりますし、不経済にもなります。がんばれば理解できる、ゆっくりでも読み進めていけるくらいのものがいいでしょう。何よりも興味を持ち続けられることが一番大切です。

理解した内容を、自分のものにする技術(記憶の定着)

さて、一冊の本を読み切れば、知識はそれなりに増えますし、新しいアイデアや疑問点、興味なども湧いてきて、思考が大きく広がると思います。しかし、記憶というのは時間とともに薄れていきます。せっかく時間をかけて熟読した内容ですので、忘れてしまってはもったいないですよね。また、たとえ忘れかけてもすぐに思い出せるようにすることがとても大事です。そこで、ぜひとも作成してほしいのが、「読解ノート」です。これを作るひと手間をかけることで、読んだ知識が確実にあなたの財産になっていきます。確かに作成するのは「ひと手間」がかかります。しかし、改めて読み直すことに比べれば、はるかに時間・労力の観点で経済的だと言えます。

まず、新書や教養書の場合です。私は読み進めながら、重要な箇所は傍線を引いたり、囲ったり、キーワードを丸で囲ったりします。同時に読解ノートを作ることを先に見込んで、余白に簡潔にまとめをメモしていきます。要約を作るということは、頭の中で整理し直すことにほかなりません。ある程度読み進めたところで、それを大学ノートにまとめていきます。30ページくらい読み進めたらまとめる感じです。単純に抜書きをするだけでもいいですが、整理し直す方が頭に残ります。この、整理をしてアウトプットする作業は、結構強く頭に残ります。

お粗末で恐縮ですが、これは私が作ってきた読解ノートの1ページです。こんな感じでまとめていくのですが、まとめていく過程で知識が整理され、記憶にも残りやすくなります。

学術書の場合はもう少し丁寧に進めます。教養書よりも読み進む進度も遅くなりますし、一つ一つの中身を確実に理解していかないと、いずれ訳が分からなくなってしまいます。私は別にメモ用紙を置いて、そこに内容を要約したり、理解しにくいところは図にして理解したり、抽象的な記述は実例に置き換えてみたりします。こうして確実に理解した部分を、少しずつまとめていきます。本にもよりますが、難解な本の場合は2〜3ページ進めたら一度まとめていくぐらいのペースになることもあります。

こんなことを繰り返していくと、一冊の本に半年とか一年とかかかることもあります。しかし、字面を追うだけでは全く太刀打ちができない難解な本が、これで確実に理解することができるので、とても意味のある作業だと思っています。本当に重要な本には、こうして手間をかけて取り組む価値が十分にあります。ただし、手間の観点からこのような取り組み方ができる本は限られていますので、どの本にこのような取り組み方をするのか、見極めなければなりません。労力をかけてでも読み切る価値があるものにのみ、このようなアプローチをすることが重要です。それ以外のものについては、いかに確実に、かつ効率的に概要を把握できるかを考えた方が経済的です。

さて、いずれにしても、この「読解ノート」を作成することは、新書から学術書まで、読んだすべての本で作ることをお勧めします。これは絶大な効果をもたらします。オクスフォードやケンブリッジなどでは、本を読んではレポートを提出するという課題が極めて頻繁に出されます。それは、整理してアウトプットする作業が、その人の知識として残っていくことを狙ったものにほかなりません。読解ノートをつくる作業は確かにひと手間ですが、面倒に思ってやらないと、結局は損をすることになりますので、必要経費だと考えてぜひやってみてください。

本の整理も読書活動の一環

読書がライフワークになると、蔵書がどんどん膨らみます。せっかく買った本なので、できれば取っておきたいところなのですが、現実的にキャパシティーには限りがあると思います。セカンドハウスをお持ちの方なら、蔵書の容量を増やすこともできるでしょうし、トランクルームのようなものを利用する人もいます。しかし、いずれにしても野放図に蔵書を増やしていくとキリがありませんし、生活空間への制約も出てきます。

本当は全てとっておきたいところですが、取捨選択をして廃棄することも読書法のひとつだと思っています。優先的に本棚に置きたい本は、やはり本気で取り組んだ本になります。また、高価な本、廃版になっていたり手に入りにくい本、これまで何度も読み返していたり、これからも読み返す可能性が高い本などは優先度が高いと思います。これは、学術書であろうと、気分転換のための本であろうと同じです。

一方で、過去何年も手にしていない本や、いずれ読むとは思えない本などは、思い切って捨てることも必要です。そう頻繁に手に取るとは思えない本で、それでも、いざ調べ物をするなどで手にする可能性がある場合は、ダンボール一箱分だけ、押し入れに入れることを許容範囲するのも手です。ただし、これもいずれはいっぱいになりますので、新しいものが入ったら何かを捨てる。トレードオフをしていくことが必要です。新しい本を棚に並べるためには、スペースを作らなくてはなりません。こうしていくと、本棚に並ぶ本は、だんだん価値の濃度が上がっていきます。新書などは必要なことをまとめてあれば、捨てることもできます。この意味でも読解ノートは役に立ちます。とはいえ、一度まとめた本には愛着が湧きますので、なかなか捨てられませんが。

さて、いかがでしたでしょうか。本に読むコツがあること、知識を効率的に定着させる手段があることを紹介してきました。これはあくまでも私のやり方ですので、こうでなければならないということではありません。ひとまず私はこのような読み方をすることで、安定して読書を進めることができていると思っています。それぞれ工夫をして、実践しながら自分に合った読書術を編み出していくのもいいと思います。みなさんも、素晴らしい本たちと、末長く良い付き合いをしていけるといいですね。

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