イギリスのお酒の文化 スコッチ•ビール•サイダー•ピムス

皆さんこんにちは。外苑ソーシャルアカデミーの山田です。日本はまだまだ残暑の季節ですが、イギリスはここのところ暑く、日中は30℃に達する日も少なくありませんでした。とは言え、湿度が低いので日本の暑さとは比べものになりませんが。イギリスはこれからストーミーな季節に入っていきます。7月に渡英してきた頃は日が長く、夜10時でもまだ明るかったものですが、ここのところ日に日に日照時間が短くなってきています。

さて、本日はイギリスの飲み物、特にお酒について少し紹介してみます。

イギリスのお酒といえばウイスキーやビール、そしてイギリス発祥ではありませんがイギリスの酒場で馴染みの深いジンなどを思い浮かべるのではないかと思います。今回はイギリスらしいお酒をいくつか紹介していきます。

イギリス貴族の酒 スコッチウイスキー

まずウイスキーですが、世界中で作られているウイスキーの中でも、やはりスコッチウイスキーが一番有名です。イギリス北部のスコットランドには多くの醸造所があり、マッカラン、バランタイン、シーバス・リーガル、ラフロイグなど、皆さんがよくご存知のブランドから、地元の小さな蒸溜所まで多くのメーカーが存在し、現在もウイスキーの一大産地となっています。

麦を水につけて発芽させるところからウイスキー造りは始まります。麦が発芽するとき、種の中のデンプンが甘みのある麦芽糖に分解されます。ここでスコットランドの大地からとったピート(泥炭)を燃やして麦芽を乾燥させます。この甘い乾燥麦芽を酵母で発酵させると、やがてアルコールを含む液体ができます。これを蒸留して、アルコール度数の高い蒸留酒を取り出します。これを樽に詰めて熟成させます。

こうして樽に蓄えられたアルコール度数の高い新酒は、概ね10年以上の熟成の眠りにつきます。蒸留したての新酒は尖った荒々しい味ですが、時間の経過とともに角が取れていき、やがて芳醇な香りのスコッチウイスキーに変わっていきます。モルトウイスキーはこのように作り方はシンプルなのですが、醸造所によって味に個性があり、それぞれの味を守っています。

イギリスは今も歴然とした階級社会ですが、ウイスキーは昔から高級酒なので、かつては貴族たちが好んで飲みました。「ダウントン・アビー」というテレビドラマがあります。19世紀末から20世紀初頭、封建時代から新時代に変わる過渡期のイギリス貴族の生活が変化していく様をリアルに描いたシリーズで、世界的な人気を博しました。時代考証や貴族の文化考証を実際の貴族がおこなっているため、非常にリアルで、イギリスという国がよく分かるので、みなさんにもぜひお勧めしたい海外ドラマです。

主人公となるのはある伯爵家一家と、その屋敷で働く使用人たち。超上流階級(貴族)の人々の生活と、執事から下僕、料理人や小作人といった労働者階級の生活のコントラストか実によく描かれています。いわばイギリス世界の光と影。階級の違いによって生まれる両者の生活の違い、たとえば階級によって住む場所や娯楽、服装、悩みごと、そして食べ物や飲むお酒の種類が違うことまで、克明に描かれています。貴族たちが飲むのはワインやウイスキーですが、労働者たちはなかなか口にできません。特にウイスキーは上流階級の男性たちの飲み物で、伯爵が屋敷のサロンで飲むシーンがよく登場します。ぜひそんな歴史を感じながらスコッチウイスキーを飲んでみてください。これは貴族たちの味わいであり、労働者たちはなかなか口にできなかったものなのだと。スコッチはイギリスのお酒の王様であり、イギリスの階級社会を象徴する酒なのです。

スコッチ初心者におすすめなのは、口当たりの良いボウモアやシーバスリーガルなど。単一の麦芽を使ったシングルモルトウイスキー(マッカラン、グレンフィディック、ボウモアなど)は繊細で凛とした味わいがあり、異なる麦芽から作った原酒をブレンダーが黄金比で組み合わせたブランディッドウイスキー(バランタイン、シーバス・リーガルなど)は豊かでふくらみのある味わいがあります。

国民的なお酒 イングリッシュビール

さて、イギリスでもっともよく飲まれている飲み物といえば、圧倒的にビールでしょう。ビールは庶民たちも含めて、昔から広く飲まれてきました。いまでも多くの人々がパブですビールのグラスを傾けています。

イギリスでビールが広まったのには理由がありました。イギリスは綺麗な水が得にくかったので、飲料水が衛生的ではありませんでした。イギリスには高い山がないので川の流れが弱く、全然流れていきません。日本のように綺麗な水が上流からどんどん供給されるような環境ではないのです。そこで昔の人々はその水をビールにすることで殺菌作用を狙い、飲料水がわりに広く飲んだのです。オックスフォードにもテムズ川の上流が流れていますが、まるで池の水のように濁っています。言うまでもありませんが、いまは綺麗な水で作っているので心配ありません。

さて、ご存知の方も少なくないと思いますが、イギリス式のビールは私たちがよく飲んでいるドイツ式のビールとはだいぶ違うものです。イギリス式のビールは、口当たりが軽く、ゴクゴクと飲み干し、あと口が爽快というようなビールではなく、どちらかといえば濃厚で重く、苦味が強く、一口ずつゆっくりと味わうようなものが一般的です。

最近ではどこのパブでも夏場のビールはよく冷やされていますが、昔はパブのビールは常に常温で供されるのが普通でした。もともと常温で提供される飲み物であることからも、爽快さを求める類の飲み物とは少々違うことが分かると思います。イギリス式のビールは、ドイツ式に比べて泡もあまり立たないものが多いです。ドイツ式のビールの多くは黄金色で透明感がありますが、イギリスやアイルランドのビールは琥珀色からほぼ黒に近い色をしています。ギネスはアイルランドのビールですが、系統としては似ています。ギネスほど黒くなく、琥珀色のものが多いですが。

イギリス式のビールは重くて濃厚なので、好き嫌いも分かれるようで、今ではパブにもドイツ式のビールがたくさん置いてあります。イギリスの人の中にもドイツ式のビールを好む人もあり、いつもハイネケンなどの軽いビールを飲んでいる人もいます。先週訪れたオクスフォードの有名なパブのカウンターには、日本のビールのタップがあって大変驚きました。イギリスで見たのは初めてです。ずっとオクスフォードにいるせいかもしれませんが。

 さて、私たち日本人としては、ビールといえば、ぜひつまみが欲しいところですが、イギリスの人々は、クリスプスのようなごく軽いおつまみを食べるか、もしくは何のつまみも食べずに、おしゃべりをしながらビールだけをゆっくりと飲んでいくことが多いです。とはいえ、味も濃厚なので、時には味に飽きてくることがあります。

ビールの飲み方の一つにシャンディーガフというカクテルがあります。普通日本ではビールをジンジャーエールで割ったものをシャンディーガフと言っていますが、本来はビールをジンジャービアで割ったものが正統です。ジンジャービアは本物の生姜を使っているので、ジンジャーエールよりも香りや刺激が強いのが特徴で、これで作ったシャンディーガフは濃厚で香りも豊かです。

パブでシャンディーガフを飲むのは簡単です。まず1パイントのビールをオーダーしたら、おしゃべりをしながらそれをゆっくりと半分まで飲んでいきます。半分まで飲んだところでカウンターに行き、ハーフパイントのジンジャービアをオーダーします。これを先ほどのグラスに注げばシャンディーガフの完成です。ビールの味にちょっと飽きてきたときに、少し目先の違うシャンディーガフに移行するのもパブスキルの一つなんですね。イギリスを訪れたときはこんな応用編もぜひ試してみてください。

イギリスを象徴する甘く爽やかなお酒 サイダー

もう一つ、イギリスのごく一般的な飲み物として忘れてはならないのがサイダーです。日本でサイダーと言うと、炭酸入りの甘い清涼飲料水を指しますが、イギリスのサイダーはリンゴなどの果実を醸造した酒になります。

100%のリンゴ果汁から作った酒なので、フルーティーでとても美味しいお酒です。CiderはフランスではCidre、つまりシードルですね。パブに入ったものの、「今日はちょっとビールは重いな」というときなど、サイダーは軽くて飲みやすいですし、ビールを何杯か飲む合間にサイダーで変化をつけるのも一つの飲み方です。

サイダーにも様々なブランドが存在し、大手のメーカーから小規模生産されたローカルなサイダーまで沢山の種類があり、どこのパブにもサイダーは必ず置いてあります。

大手メーカーとしては、アスポールやマグナース、ストロングボーなどの銘柄が有名ですが、それぞれ甘いものや酸味の強いもの、アルコール度数の高いものから低いものまで個性があります。その時の気分や気候、喉の渇き具合などで飲み分けるのもいいですし、飲み比べながら自分の味覚に合ったものを探してみるのもよいと思います。サイダーは元々はリンゴのお酒ですが、最近は洋梨やベリーの味のものも出ています。

サイダーのアルコール度数はビールと同程度の概ね4%から10%くらいまで。夏の暑い日に強い陽射しから逃げるようにパブに飛び込み、キンキンに冷えたサイダーを飲むのは本当に美味しいものです。こういう暑い日には、イギリスではビールにするかサイダーにするかとても迷います。

ときにはローカルのビアフェスティバルが開かれることもあり、地元の少量生産のサイダーやクラフトビールを飲み比べられる機会になります。こうしたサイダーは濁りが入っている濃厚な味わいのものや、素晴らしくフレッシュな味わいのものもあり、まさに地酒というに相応しいものです。もちろんビールも手作りの濃厚で美味しいビールが味わえます。こうしたビアフェスティバルはたいてい小さな催しなので、ローカル情報に敏感にならないとなかなか開催の情報をキャッチできないのですが、ローカルコミュニティーに入り込んでいればそんな機会にも恵まれます。

イギリスのオリジナルカクテルベース ピムスNo.1

もう一つ、イギリスらしい飲み物として紹介したいのが、こちら。

ピムスNo.1というリキュールです。これは1870年代にロンドンで作られた、カクテルの原酒とでもいうべき酒なのですが、炭酸などで割ることで家庭でも手軽にカクテルが作れるように製造されました。ジンベースやウイスキーベース、ラムベースなど味が異なるピムスNo.1からNo.6まであるのですが、今でもイギリスで最も人気があるのはジン•スリングというカクテルの素であるジンベースのピムスNo.1になります。

ピムスNo.1に入っているのはベースとなるジンのほか、エルダーフラワーという甘い香りのハーブや、レモンなどの果汁、砂糖、それにいくつかのリキュール類です。ピムス自体はとても甘くほろ苦いのでそのまま飲むには適していませんが、氷を入れたグラスに入れたものを冷たい炭酸水で割って、レモンのスライスと果汁を搾って飲むのがおすすめです。こちらもどこのパブにも置いてありますので、気軽に飲むことができるイギリスの味です。

ここでは代表的なお酒だけを紹介しました。イギリスには多くのお酒と、パブの文化があり、今もイギリスの日常になくてはならないものとして存在し続けています。

ちなみにヨーロッパの人々(コーカソイド)はアジア人(モンゴロイド)よりもお酒が強いと言われます。もちろん個人差はありますが、統計上この差は歴然と存在します。なぜ人種によってお酒に対する強さに差が生まれたと思いますか?ヨーロッパ人が沢山お酒を飲んでアルコールに強くなったという俗説がありますが、事実はそうではないんです。人類はもともとお酒に強かった。ところがアジア系の人がお酒に弱く「進化」したと考えられています。アジア人がわざわざお酒に弱くなったのはなぜだと思いますか?それはアジアの風土特有のとても合理的な理由があるのです。答えは‥‥長くなるのでここでは書ききれないのですが、定例講座のときにでも直接私に聞いていただければお答えしますね。

いかがでしょう。イギリスの素晴らしいお酒も、歴史と文化、そして気候風土が育んできたことをご理解いただけましたでしょうか。文化を深掘りすると、旅の楽しみが倍増していきます。そんな土地の文化や歴史を知って現地のローカルコミュニティーに入り込むと、食べるものもお酒も本当に美味しいものに出会うチャンスが確実に生まれますし、ものすごく貴重な体験につながります。まさにこれがGSAが推奨するディープな海外体験です。

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