イギリスの裏側の世界 イギリス秘密情報部MI6とエージェントたちのスパイ活動

近年人気のコミック・アニメSPY×FAMILYでは、秘密情報機関のエージェント、ロイド・フォージャー(コードネーム黄昏)が主人公アーニャの仮の父親として登場します。ロイドさんのように国家の命令を受けてスパイ活動をしているエージェントは、現代では架空の話だと思うかもしれません。しかし実際には国際社会において、このようなエージェント(工作員)は現在でも活発に活動していると言われています。

こうした特殊情報を収集・分析したり、情報工作等を行う活動のことをインテリジェンスといい、その活動の最前線で働いでいるのがエージェントたちなのです。

過去に起きた不可解な事件

プーチンに反旗を翻したワグネルのプリゴジン氏がヘリの墜落事故で亡くなったのは最近の話です。裏で何があったのでしょう。こうした不可解な事件は過去にいくつもありました。

北朝鮮の金正男氏が空港で暗殺された事件は記憶に新しいところです。また、亡命したものの毒を盛られたアレクセイ・リトビネンコ氏がベッドに横たわる姿も衝撃的でした。

また、プーチン政治の正常化と民主化を求めてメディアで活躍していた、ジャーナリストのアンナ・ポリコフスカヤ氏はエレベーターで射殺されました。古くは大韓航空機爆破事件で逮捕された金賢姫工作員のことが記憶にあるという世代の方も沢山いるはずです。今上げたのはほんの一例にすぎません。こうした事件の裏には各国の「秘密情報機関」の工作員(エージェント)が関わっているケースが少なくないと考えられます。ただし、このように表に出てきてしまうケースとは仕掛けが荒い場合です。通常はこうした派手な事件にはならず、秘密裏に活動が行われています。

秘密情報機関とは

こうした秘密情報機関を持つ国は少なくありません。アメリカのCIAやFBI、イギリスのMI6、ロシアのKGBやGRU、日本の公安などがこの秘密情報機関にあたります。これらの情報機関は表舞台にはあまり出てこないですが、それぞれの機関は独自にエージェント(いわゆるスパイ)を養成し、情報収集(インテリジェンス活動)や特殊工作を行っており、現在も各国の政治や外交に盛んに利用されています。

 こうした国々のなかで、秘密情報機関やエージェントの養成で先進国だったのはイギリスです。映画007のジェームズ・ボンドはこうした機関のエージェントですが、この映画はイギリスの秘密情報部(MI 6)とそのエージェントをモデルに作られ、ジェームズ・ボンドのモデルはM I6のエージェントだったジョージ・ライリーという人物だと言われています。  

各国の秘密情報機関

各国の秘密情報機関で要請されたエージェントは、自国内での活動だけではなく、世界各国に散らばり、それぞれ任務を遂行しています。社会の中に自然に溶け込みながら、何年もかけて与えられた任務を行なっていると考えられます。

では、各国の秘密情報機関にはどのようなものがあるのでしょうか。まずは本家本元のイギリスを見てみましょう。代表的なものだけでも、MI 2(陸軍情報部)、NID(海軍情報部)、AID(英空軍情報部)、MI5(内務省保安部)、MI 6(秘密情報部)、GC &CS(英外務省政府暗号学校)、FECB(極東統合局)、BSC(MI 6アメリカ支部)などが知られています。

またロシアには旧ソ連時代に発達したソ連国家保安委員会(KGB)第一総局、第二総局が実態としてほぼそのまま存在するほか、ロシア対外情報庁 (SVR)、ロシア連邦軍参謀本部情報総局 (GRU)などが存在しています。ロシアは監視が強い社会ですが、ソ連時代から国民への監視や盗聴などは日常的に行われていました。レストランの灰皿や燭台に盗聴器が仕掛けられていたのは有名な話です。また西側の外交官や駐在員に対する様々な仕掛け(謀略)も後をたちません。

日本の同盟国アメリカにも、中央情報局 (CIA)、連邦捜査局(FBI)、アメリカ国防情報局 (DIA)、アメリカ海軍情報局 (ONI)、アメリカ国家安全保障局 (NSA)、アメリカ陸軍情報保全コマンド (INSCOM)などが存在し、アメリカ国内だけでなく、世界中から情報収集をしています。アメリカは世界の警察を自認してきましたので、情報網が世界中に張り巡らされています。また、歴史上さまざまなプロパガンダも行なってきました。諜報についても東西冷戦の情報戦を通じてその技術がどんどん進歩したと言われています。

では日本はどうなのでしょう。こうした秘密情報機関がないイメージの日本ですが、実は取りまとめ役の国家安全保障会議国家安全保障局(NSS)を中心に、内閣官房内閣情報調査室(内調・CIRO)、防衛省情報本部(DIH)、警察庁警備局(公安)、法務省公安調査庁 (調査庁・PSIA)、外務省国際情報統括官組織(IAS)などの機関が秘密情報機関として動いていると考えられています。例えば、公安の活動などは、同じ警察の中にいる一般の警官でさえ分からないといいます。私たちの知らない情報機関があるというのは、気持ちが悪いと思う人もいるでしょう。一方で、しっかりとした情報機関がなければ、国際社会を生きる先進国としてやっていくことは不可能です。とはいえ、日本については対外国のインテリジェンスは極めて脆弱と言われており、現在存在している情報機関の多くは国内の治安維持を中心に活動していると考えられます。この20〜30年で日本を取り巻くパワーバランスは大きく変わり、産業界でも日本の技術が抜き取られてきました。日本にも対外インテリジェンスを専門とする「日本版MI6」が必要だという声は昔からあり、日本の安全保障や知的財産の保護などのためにも、早急に整備すべきだと考えられます。

秘密情報機関の任務

近年、イギリスでは情報公開法により、機密文書のうち古い公文書が公開されるようになり、その研究が始まりました。その研究成果により謎に包まれていたMI6などの活動が明らかになってきました。特に第二次世界大戦における秘密情報機関の役割が明らかになってきており、その中にはイギリスの対日本戦略を読み取ることができるものがあります。

またエージェントたちの活動の様子も分かってきました。謎が明らかになるにつれ、SPY×FAMILYの世界は決してフィクションとばかりは言えず、現実に似たような活動を行なっていることも分かってきました。例えばスパイ行為で得た情報を敵に傍受されない形で本部に知らせるには、紙ベースでつなぎ役に渡すのが1番です。ではその受け渡しに使われるよい方法とはどんな場所なのか。こんなスパイたちの使う技まで分かってきたのです。

秘密情報機関の活動をより深く知るために

ここまで秘密情報機関の概要をお伝えしてきましたが、さらに具体的な内容はどうなっているのでしょうか。情報機関はどんな活動をしているのか。またそのエージェントたちのスパイ活動の技術や実際の工作活動はどうやって行われるのか。さらには歴史的にどんな活動をしてきたか、例えば第二次世界大戦でイギリスは秘密情報機関のもたらした情報をつかって日本に対して何をしたのか。このような話をGSAの9月の定例講座(ワークショップ)でお伝えします。

なぜイギリスはインテリジェンスの先進国になることができたのか。さらに世界中の国籍を持つスパイはどうやって作られるのか。また、あなたがエージェントに向いているかどうかを試しにチェックしてみる適性テストも今回の定例講座でやってみたいと思います。

これは陰謀論や都市伝説のレベルではなく、世界史の裏側を常に動かしてきた秘密情報機関について学術的にお伝えする講座です。本ワークショップの開催は、2024年9月13日(金)夜18時10分より、渋谷の國學院大学2201教室で開催します。講師はオックスフォードでの研究留学経験があるGSAシニアフェローの山田が担当します。実はオックスフォード大学も、イギリスが世界中に人脈を広げるハブのひとつになっているため、山田が現地で聞いた裏話も沢山あるのです。ワークショップはどなたでも参加可能。オンライン受講もありますので、お気軽にご参加くださいね。参加申し込み等の詳細は、外苑ソーシャルアカデミーのホームページをご覧ください。↓

コメント

タイトルとURLをコピーしました