こんにちは。外苑ソーシャルアカデミーの山田です。前回に引き続き留学についてお届けして参ります。前編では、留学中の行動次第で留学の価値は大きく変わるという話をしました。外国人の親しい友人ができたり、大事な時間をともにすることで、彼らが私たちに多くの経験をもたらしてくれることや、その後の人生にも大きく影響する場合があることも説明しました。また、異文化をしっかり見聞することが目的なのであれば、ビギナー向けと思われがちの語学留学も、時間を有効活用できるとても良い選択肢のひとつだということでした。
また、ヨーロッパの学生たちは様々なことに広く関心を持とうという気持ちが強く、コミュニケーションをとるために我々も日本のことやヨーロッパの文化や宗教のことなど、色々なことを知っておく必要があるということもお伝えしました。知識というものは短期間に詰め込もうとしても身なかなかにつきません。やはり普段から多方向に好奇心のアンテナを張り、広い教養を身につける意識と、深く考える癖をつけることが非常に高い大切だということでした。
さて、前編でお伝えした留学のエッセンスを下地に、この後編では実際の留学の準備や手続きなどについて説明していきましょう。
社会人におすすめの留学の仕方
最初に社会人の方向けの話をし、次に大学生向けの話をします。留学を計画するのであれば、まずは期間を決めなければなりません。社会人の皆さんは多くの場合、お金よりも時間がより大きな問題になるでしょう。勤めている方は、仕事をやめない限り、長期間にわたって留学の時間を確保することはなかなか難しいケースがやはり多いと思います。
そんな方は、ひとまずひと月の留学を目指してみてはいかがでしょうか。初めての留学であれば、4週間でもとても大きな経験になると思います。例えば有給休暇が20日あるならば、これを使うのが手っ取り早いでしょう。土日と合わせれば4週間はしっかり確保できます。まとまった休みを取りづらいという方もいらっしゃるかと思いますが、留学は学びでありスキルアップにもつながることですので、計画的に丁寧に職場に相談すれば、理解を得られる可能性も大きくなると思います。信頼できる上司に誠実に話をすることが大切です。
有給扱いであれば何も問題がありませんし、理解のある職場では、5週間目以降を研修扱いとして6割給扱いで支援してくれたり、もしくは欠勤扱いにはなるものの気持ちよく行かせてくれる場合もあると聞きます。うまくいけば、2ヶ月くらいの期間が取れることもあるかもしれません。仮にそううまくいかなかったとしても、ダメで元々の話です。その場合は、4週間の留学を最大限充実させる方法を考えてみてはどうでしょうか。職場の事情をよく見極めてチャレンジしてみるのがいいでしょう。
ちなみにイタリアやスペインなどのヨーロッパからイギリスに学びにきた留学生たちの中には、2週間か3週間しか滞在しない人も沢山います(ヨーロッパからの夏の留学生は、3週間程度の学生が多いです)。なにせ彼らは飛行機で3時間ほどで到着するところに住んでいますから、それほど大旅行というわけではないのです。もにろん日本からはるばる行くとなると、できるだけ長く滞在したいですよね。もちろん2週間でも十分に行く価値はありますが、少しでも多くの経験をするために、できれば4週間はほしいところです。ひとまずここでは4週間の語学留学をする前提で考えてみたいと思います。
4週間の留学では、それだけで英語力が飛躍的に伸びるということは普通はありません。もちろん次第に英語に慣れてきますが、言葉が淀みなく出てくるところまではなかなか到達しないでしょう。語学留学には普通半年程度は必要です。そこで、留学する前にあらかじめ半年なり一年なり、日本の中で英語力や会話力を強化しておくやり方をお勧めします。これで留学時の学習効果が格段に大きくなります。しっかり単語を覚えたり、表現を覚えたり、リーディングやリスニング教材を使って勉強すると効果的です。また、カフェなどでネイティブに英会話を習う方法を合わせて行うと、英語を話すことにも聞くことにも次第に慣れ、英語で会話することへの苦手意識が少なくなるでしょう。こんな準備を一年くらい積んでおき、しめくくりとして留学先での4週間を総括的に使うことで、短い留学の効果を最大化する方法が社会人の方にはおすすめです。留学先では外国の留学生たちとコミュニケーションをとる時間を最大限作りましょう。
大学生の留学について
大学生の方は、社会人の方に比べれば時間の都合がはるかにつけやすいはずです。このようなゴールデンタイムは今しかありません。このメリットを最大限活用しましょう。どちらかと言えばお金の都合がつくかどうかの方が問題になるかもしれません。海外の物価高は想像以上です。イギリスでは、スーパーマーケットの500㎖のコーラが300円という感じで、あらゆるものが高いので、親の援助がないとなかなか大変です、また、石油価格の高騰やウクライナ情勢を受け、航空券の料金も上がっています。しかし、それでも若い頃の海外経験は何物にも代え難いものがあります。バイトをしながら、親御さんとも相談をして実現させてください。
大学生の方の場合、大学が準備する交換留学や、同じく大学の長期・短期の語学留学などがあると思います。こうしたプログラムを利用するメリットは、さまざまな手続きや詳細な説明を大学が行ってくれることです。特に交換留学の制度は、長期の海外生活が経験できるだけでなく、海外の大学生活も経験することができるため、可能であればぜひ参加してほしいと思います。これは大学生ならではの特権で、社会人になるとハードルがものすごく高くなります。卒業年限や卒業単位との関係はプログラムによって異なると思いますのでよく調べてみましょう。
特に英語力のことを考えると、早めの留学がおすすめです。大学生の皆さんは大学受験からそれほど時間が経っていません。また、近年はTOEICなどの検定を受けている人も多いと思います。こうした基礎的な英語力があるうちに、まとまった留学をすると、とても効率のよい勉強ができます。みなさんには今、語彙力や文法力などの武器が沢山ある状態です。あとはそれをどう使いこなせばいいかを理解するだけ。鉄は熱いうちに打てと言いますが、時間の自由と基礎的な英語力の両方を備えたこの「ゴールデンタイム」を逃す手はありません。
留学する国と都市を選ぼう
では、実際にどのように計画を進めていくのか、手続きを含めて考えていきましょう。まずはどこの国に留学したいのか、またその国のどの都市で生活したいのかを考えるところから留学はスタートします。英語の語学留学の場合、アメリカ以外に旧イギリス領であったコモンウェルスの国々を中心に、英語が公用語となっている国がいくつもあります。主な留学先としては、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、アイルランド、マルタ共和国、南アフリカ、フィリピンなどが有名で、これらの国には語学学校や大学のランゲージサービスが数多くあります。
もちろん国によって滞在環境が大きく異なります。イギリスとフィリピンでは街の雰囲気も文化も気候も、人々の雰囲気や食べ物も全く異なります。またアメリカなどは国土が広大ですから、都市によって雰囲気が異なります。どのような街に滞在したいのか、どのような文化を知りたいのかを明確にしましょう。さらに治安や物価の面も重要です。街が安全なことも大切ですし、物価も安いに越したことはありません。アメリカやイギリスの物価は、多少の工夫ではどうにもならないくらい上がっています。これに通貨レートのタイミングも検討に加わるでしょう。
さらに同じ英語でもイギリス英語とアメリカ英語は異なります。近年の世界基準となっているのはアメリカ英語で、日本の学校教育もアメリカ英語が標準です。私自身はブリティッシュイングリッシュを学びましたが、単語も発音もアメリカ英語とは異なります。例えば車のトランクのことをアメリカではtrunkといいますが、イギリスではbootと言いますし、ナスのことはアメリカではeggplant、イギリスではaubergineといいます。懐中電灯はアメリカではflashlightですが、イギリスではtorchといいます。イギリス英語は鼻にかかったように話すとよく言われますが、明確な発音と独特のイントネーションがあり、アメリカ英語はよりスムーズで語尾は丸く感じます。
語学力が上がるに従って、この差は大きくなってきますが、どちらを学んでもコミュニケーション上それほど大きな問題ではないと思います。学びやすさからすると慣れ親しんだアメリカ英語かもしれません。これについては自分がどちらの英語を身につけたいかで考えていいでしょう。またオーストラリアやニュージーランド、アイルランドなどの英語も、一種の方言のように発音が異なるところがあります。
また都市選びも重要です。これはどこの都市にどのような語学学校があるのか、エージェントがどの学校と契約しているのかなどで、選択肢はある程度限定されてきますが、同じ国の中でも街の雰囲気は大きく違いますので、旅行のガイドブック等で調べてみましょう。私はイギリスのことしか分かりませんが、大都市のロンドンと、学園都市のオクスフォードと、田舎の観光都市のバースでは雰囲気も街の規模も違います。また、日本人の多さや、住民の人種構成も変わってきます。ロンドンの留学は人種のるつぼに入る感じですが、田舎町のソールズベリーの留学はまったく雰囲気が変わります。買い物や見どころの多さではロンドンでしょうし、昔から変わらない街の雰囲気を知りたいならソールズベリーだと思います。ここはどんな環境を体験したいのかで選択すればいいと思います。
エージェントを使う
大学のプログラムに参加するのであれば、エージェントはあまり関係ありません。しかし社会人の方はもちろん、大学生でも同じ大学の人と顔を合わせないで留学をしたい場合などはエージェントを使うほうが便利だと思います。空きの確認や入学許可証の申請など、面倒な手続きを代行してくれるのがエージェントです。エージェントは大手の旅行会社が運営している大規模なエージェントから、小さな会社までさまざまです。エージェントに依頼すると、必要書類の準備やお金の支払いなど、順番に指示をしてくれますので、それに従って迅速に対応しましょう。
ただし、それぞれのエージェントは基本的には契約を結んでいる語学学校や大学しか扱うことができません。滞在したい国や都市の学校を扱っているかどうか、またどんな学校なのか、それぞれのエージェントの運営するホームページや学校のホームページなどを確認をしてみてください。
少し気をつけたいのは、エージェントによって、レスポンスや留学先の選択の幅に違いがあることです。特スポンスが悪い会社や担当者に当たると、なかなか返信が返って来なかったり、要望が通りにくかったり、あとから重要なことを見逃していたりということが出てきかねません。なかなか話が進まず、けっきょくエージェントを変えたという話を聞くことがあります。エージェントはやり取りをしながらよく見極めましょう。
また、エージェントからのレスポンスを良くするためには、あなたからの質問事項や伝達についても要点を分かりやすくまとめて伝えることが大切です。近年はメールでのやり取りになることが多く、話のニュアンスや必要な情報が伝わりにくいことは否めません。できるだけ結論をしっかり出して伝える、迷っていることや知りたいことがあるなら、ポイントを簡潔にまとめて伝えるようにしましょう。ちなみに、外苑ソーシャルアカデミーの定例講座に足を運んでいただいている方には、信頼できるエージェントをご紹介することもできます。必要な方は定例講座の会場で気軽に声をかけてください。
アコモデーション
アコモデーションというのは滞在施設のことです。留学の場合、一般に、ホームステイ、寮、ホテルの三つのパターンがあります。
① ホームステイ
ホームステイのいいところは、現地の人の暮らしを見ることができることでしょう。ホームステイというのはいわば下宿宿のことで、ホストファミリーとは必ずコミュニケーションをとることになりますから、家の中でも英語も使う機会ができます。特に時間に余裕のある高齢者や子供がいる場合など、いい話し相手になってくれることがあります。また、寮やホテルに比べると、滞在費が安いことも大きな魅力です。
一方で、一般の家庭の中に入るわけですから、夫婦喧嘩が聞こえてくることもあるかもしれません。また、ホームステイはビジネスですので、最低限のコミュニケーションしかとらない家庭も少なくありません。中高生のときに語学研修に行った人は、休みの日にホストファミリーがどこかに連れて行ってくれた経験や、庭でバーベキューをした経験があるかもしれません。しかし、18歳以上の場合、そのようなことは基本的に一切ありません。ホストファミリーは家計の足しにするために留学生を受け入れているのであって、交流のためにやっているわけではないのです。またシャワーの時間をはじめ、鍵の扱いなど、守るべきルールやマナーもあるでしょう。
また、留学生はホストファミリーの人種を選ぶことはできません。イギリスでホームステイをして、アジア系の家を割り当てられることはよくある話です。これに対して白人の家をリクエストしたり、白人の家に変えてほしいなどということは人種差別になりますので、絶対にしてはならないことに当たります。その一方で、アジア系の家の方が食事に恵まれていることも少なくありません。私は生粋の白人の家にホームステイしていましたが、正直食事には大変困りました。朝はコーンフレークのみ。夕食は出来の悪い冷凍食品ばかりで、結局自分で外食することにありました。ホストファミリーが日本食を誤解して、驚くようなものが出てきたこともあります。この話はいずれ定例講座でお話できればと思います。
② 学生寮
ホームステイに抵抗のある方は、学生寮も選択肢になります。夏の間だけ大学の学生寮に入ることができたり、学生寮と周年で提携している語学学校もあります。学生寮は個室が4部屋ごとに共用のキッチンがついているパターンが多いです。ときにはシャワーやトイレが共用という場合もあります。寮の良い点は、ひとつにはキッチンが使えること。料理ができるということは、比較的好きなものを食べることができますし、現地の食材を試してみることもできます。食に興味がある人は、キッチンがあることでいろいろな経験ができるのです。また、留学生どうしで料理をつくり合うこともできるでしょう。ホームステイの場合、キッチンは使えないのが普通です。
また寮はホームステイよりも個室に鍵がかかりますから、プライバシーがしっかりしていることも挙げられます。
一方で寮はホームステイに比べると滞在費は高くなります。さらに、食事は普通ついていませんので、自分で料理をするか、外食をすることになります。
寮のリスクは騒音です。キッチンは4人ほどの共用スペースになっており、あなたの部屋と扉一枚で区切られていたりします。キッチンでパーティーを開くような人がいると、深夜まで騒がしいことがあり、場合によっては夜2時3時まで寝られないということもあるかもしれません。また、別のプロックでも大音量で音楽を流しているような留学生がいたこともあります。
こうした迷惑な行為に対しては、学校側にきちんと対応するように強く要求することが必要です。状況を記録し、誰が原因なのか、どれだけ困っているのか、セキュリティーの担当者に見回ってほしいとか、当該の者に直接注意を与えたうえ、張り紙をしてほしいなど、状況の説明と要求を明確に伝えることが必要になります。もちろん毎回こうしたことが起こるわけではありません。しかし必要なときにはきちんと伝えるとともに、自分も同じようなことをしないように気をつけることが大切です。
③ ホテル滞在
最も快適なのはホテル滞在でしょう。ただし、滞在費が大幅に上がることと、ホテルスタッフ以外とは交流が持てないこと、夜間のロックの問題、キッチンがないことなど、いろいろと制約もあります。朝食はついていますが、夕食はついていないことが普通です。また安いホテルの朝食はすぐに飽きてしまいます。私はカナダの語学研修の引率に行ったときにホテルに泊まっていましたが、朝食に出てくるものがほぼ毎日同じで、本当にうんざりしました。
サウジアラビアのように国が留学費を出してくれるような留学生の中には、ホテル滞在という人もときどき見られます。また、日本人でも短期間の留学であれば選択肢に入るかもしれません。とはいえ、留学ではあまり一般的な滞在スタイルではありませんし、海外旅行との差別化もしにくくなります。多少の不便はあるかもしれませんが、やはりホームステイか寮生活がスタンダードです。少しでも周囲の人と会話をする機会を増やすべきですし、小さな問題を英語力で解決していくのも留学ならではの経験であり、無事に問題を乗り越えたときにはきっと自信につながると思います。
その他の準備事項など
航空券は自分で購入する場合と、エージェントにお願いすることができる場合もあります。面倒であればエージェントに依頼する手もありますが(航空券の扱いのないエージェントも中にはあります)、自分で手配することによって旅行をアレンジすることも可能です。例えば、乗り継ぎ時間の長い飛行機をあえて選択することで、経由地の市街地をトランジットで観光することもできるでしょう。たとえばこの夏、私も日本からロンドンに行く途中で、ポーランドのワルシャワに立ち寄りました。9時間ほどの乗り継ぎ時間でしたが、小さな街なら市街地を一通り見て回るぐらいのことはできます。旅行で行くことがなさそうな国は、効率的に見るチャンスです。逆に海外に慣れていなくて、あまり冒険をしたくないという人は、直行便を使うといいでしょう。少し高くつきますが、旅行時間は短くなります。
また、語学学校などには、空港に迎えにきてくれるサービスがあり、オプションでつけることができます。一万円から一万五千円くらいかかりますが、空港からホームステイ先のドアの前まで送ってくれますので、初めての街であれば、このサービスを利用する方が無難です。私はオクスフォードの街はよく知っているので、今では自分で寮まで行くのが普通ですが、初めてのときには無理をせず、特にホームステイの場合はこうしたサービスを利用したほうが間違いがありません。イギリスの家はどれも同じ形をしていて、表札も出ていないことが多いので、1人でたどり着くのはひと仕事です。
その他、パスポートの準備や外貨の準備、カード、スマホの海外仕様への切り替え、電源アダプターの準備、常備薬の準備など、やることは目白押しです。漏れのないように準備していきましょう。
いかがでしたでしょうか。今回は準備編ということで、留学準備のイロハについてお伝えしました。選択肢の判断基準や手続きの流れについて、概ね理解できましたでしょうか。
このほか、留学中に意識すべきこと、どんな姿勢で臨むと得るものが多いのか、気をつけたいこと、避けるべき行為など、留学本番中のことについても色々アドバイスがあります。特に、異文化や異なる宗教に対して、どのように向き合えばいいのか。これはなかなか一筋縄ではいかないところがあります。
11月の定例講座では宗教についての超入門編を予定しています。
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外苑ソーシャルアカデミーでは、定例講座にお越しの方を対象に、留学相談もお受けしています。 また、定例講座は留学時に必要となる様々な教養を身につけたり、思考を耕すことに役立つと思います。毎回異なるテーマを取り上げ、ご来場の皆様の幅広い教養の構築を目指していきたいと思っています。どうぞお気軽に足を運んでみてください。
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