定例講座(11月)イントロダクション 【宗教学超入門】異文化・他国の宗教との向き合い方

こんにちは。外苑ソーシャルアカデミーの山田です。すでにご案内の通り、11月24日(金)に開催する定例講座のリベラルアーツ講座では、宗教を扱います。今回のコラムでは、少しだけその予告編をお送りしてみたいと思います。

まずみなさんは、普段宗教についてどのくらいの関心を持っているでしょうか。世界には大きな宗教がいくつも存在しますが、特に話題にのぼることが多いのが、キリスト教、イスラム教、仏教の三大宗教、そしてユダヤ教かと思います。日本には主に仏教と神道が根づき、キリスト教徒は人口の1.5%程度しか存在しません。さらにイスラム教徒やユダヤ教徒は、それよりはるかに少ないので、多くの日本人にとってイスラム教やユダヤ教はあまりなじみがないかもしれません。

キリスト教、ユダヤ教、イスラム教という一神教は、古くから現在に至るまで何度も対立を繰り返し、命の奪い合いをしてきました。現在のイスラエルとハマスの対立もそのひとつです。また、この20年ほどは、9.11をはじめ、大小の自爆テロが頻繁に起こっています。

なぜ宗教のために殺し合いが起こるのか。その感覚は多くの日本人にはなかなか理解しにくく、宗教の闇のようなものを漠然と感じる方も少なくないと思います。私たち日本人にとって一神教の世界観を理解することが難しいのはなぜなのか。

キリスト教の勉強をしてみたけど、結局イマイチよく分からないという人は少なくありません。頭では分かるけど、いまひとつ肌感覚で理解できない。感覚的に腑に落ちない。それは、私たちも無意識のうちに「私たちの世界観」の中で生きており、私たちの枠組で想像することしかできないからです。私たちの世界観から一度外へ出て、そこで一神教を理解することが必要です。両者を客観的に俯瞰できる眺望点に立って、双方を正しく理解する。まさにそこが異文化理解において最も本質的な核心部分です。欧米の人々、特にアメリカの共和党支持母体であるファンダメンタリストたちは世界をどのように見ているのか。11月24日の定例講座では、ここが理解できるようにフォーカスしていきたいと思っています。

キリスト教と日本の宗教の違い

敬虔なキリスト教徒は毎週日曜日に教会に通い、神様と対話をします。日常でも食事の前後はもちろん、事あるごとに祈ります。日々が神の存在とともにあるのです。

一方、多くの日本人はどうでしょうか。おそらく冠婚葬祭やお正月、お盆などの節目のときにしか神社やお寺に行かないという人が多いと思います。あるいは散歩でフラリと神社を訪れたり、合格祈願のお願い事に行くこともあるでしょう。でも初詣のときくらいしか神社に行かない人も少なくないと思います。

いずれにしても、日本人は神様のことをいつも考えているわけではないし、神様に人生が縛られることもありません。神社とお寺の区別について深く考えない人も多いですし、法事でお寺に行ったあと、神社のお祭りに遊びに行くことにも抵抗がありません。それどころか、京都の清水寺の中に地主神社があるように、神社とお寺が同居している場合さえあります。これは一神教世界では考えられません。

日本の宗教行事の多くは、日常生活の行動様式に溶け込んでいます。普段それを意識することはほとんどありません。たとえばお正月は歳神様をお迎えするお祀りですが、これを宗教行事だと考えている人はあまりいないでしょう。まして正月の間ずっと歳神様のことを考えているわけではありません。今よりずっと宗教世界の影響が強かった近代以前でも、神道勢力と仏教勢力の間で戦争が起きたという話はあまり聞きません。こうした穏やかな性格の宗教というのは、世界の中では意外と珍しいのです。

一方で一神教の世界では、宗教の違いが命の奪い合いになるような事態が頻繁に起きています。教会の中にモスクがあることなんてことは考えられないし、同じイスラム教でも宗派間の仲が非常に悪く、お互いに正統を主張しています。イスラエルとガザ地区の戦闘もユダヤ人とイスラム教徒であるパレスチナ人の摩擦ですし、歴史上、宗教の引き起こした戦争は枚挙にいとまがない、というよりずっと起きてきました。戦争ばかりでなく、異端裁判や魔女狩りなど、一神教は人々を疎外してきました。現代でも自爆テロによって死と引き換えに死後の幸福を得ようとするような行動が後を絶ちません。なぜこのようなドラスティックな行動に引き込まれていくのか。一神教が人間の心理や行動を支配してしまうのはなぜなのか。原理主義についてもお話ししたいと思っています。

ダイバーシティは可能なのか

緩やかな宗教のなかにいる私たちが、一神教世界を理解しにくいように、一神教世界の人々にとって日本人の世界観は理解しにくいのが事実です。神社とお寺が同居したり、沢山の神様たちが私たちの周りに存在しているという世界観がよく分かりません。 

しかし、グローバル化の進行により、私たちは異文化・異宗教の人々と接触する機会が格段に増えました。海外旅行ばかりでなく、海外赴任や海外出張、留学も当たり前になりましたし、逆に日本を訪れたり日本に居住する外国人の数も急増しました。グローバル化の流れの中で、外国人との摩擦も増えて来ています。

昨今はダイバーシティという言葉が一人歩きしていますが、本当の意味で多様性を認め合うことはそんなに生易しいことではありません。相互理解には相手のバックグラウンドを理解することが不可欠で、それはすなわち相手の宗教や世界観を理解することにほかならないからです。これはかなり知的な努力が必要であり、皆が皆これを理解する世界をそう簡単に達成できるとは残念ながら思えません。しかしグローバル化の流れはこれからさらに加速するものと見られ、賛否に関わらず日本にはさらに多くの外国人が来ると考えられます。特に宗教に関心の薄い日本人は、宗教の持つ底力を理解しにくい。しかしこれを甘く見ると大火傷をしかねません。

かつてふざけてイスラム教徒に豚肉を食べさせた者がいました。自分が食べたものが豚だと知ったこのイスラム教徒は、その後死ぬほど苦しむことになったのです。イスラムの世界において、豚という動物はそこらじゅうを歩き回り、見つけた物はゴミでも動物の糞でも何でも食べてしまう極めて不潔な生き物です。イスラム教ではこの肉は絶対に食べてはならないと、厳格な規律で定められています。彼らにとってはハエやゴキブリのように不潔な生き物だと思えばいいかもしれません。この人は「そこまで深刻な話とは知らなかった」という軽い気持ちだったのかもしれませんが、宗教への認識不足は取り返しのつかないことになりかねないのです。

私自身はムスリムの友人が何人かいるので、トラブルにあったことはありませんが、一方で「今の時代にここまで世界観が違うのか!」と感じた衝撃的な経験を何度かしています。その体験は講座内でお話しする予定です。

グローバル化は止めることができない流れです。一方でグローバル化は異質なものどうしの遭遇ですから、文化や宗教の違いが顕在化し、必然的に対立が起きやすくなります。グローバル化は避けられないことは明確ですから、本来は国民が異なる文化をきちんと理解できるように国は教育を整備したり、周知する必要があるのですが、この点の取り組みはまだまだ足りていません。

とはいえ、希望もあるのです。詳しくは講座でお伝えしますが、私たち個人が異なる宗教の世界観を、頭ではなく身体で理解することは可能です。さらに同じように相手にとって理解しにくい日本人の世界観を正しく説明する。この2つができれば、グローバル化していく世界を生きるうえで強い武器になります。こういうことを国際感覚(international sense)と言うのです。

定例講座は効率的な学びと出会いの場

外苑ソーシャルアカデミーでは、タブーを廃してあらゆるテーマを扱っていきます。世界をきちんと知るためにはタブーも論ずる必要があるからです。GSAは学校で教えられないことも率直に扱うために、公教育とは異なる形態をとっています。今回(11月24日定例講座)は、キリスト教を中心に、私たちが一神教を理解する手がかりをいくつか説明します。ここでは宗教の専門的な知識を扱うのではなく、皆さんがこの分野に興味を持っていただけることを最優先して、その入り口と最も本質的な部分の講義を行います。ですから、キリスト教や宗教についてほとんど知識がない方、今まで深く考えなかったという方も大歓迎です。またレジュメに沿って進めますので、後から何度でも見直すことが可能です。

大学生の異文化理解・宗教学への入り口、大学での勉強のより本質的な理解、大人の教養、中高生の進路選択のための利用など、広い目的に対応する内容になります。ぜひ意識の高い仲間と一緒に足をお運びください。大人の方はご自身の学びはもちろんのこと、お子さんやご友人と一緒にご参加いただくのも良いかと思います。意識の高い人との出会いの場にもなると思います。

また、キャリア教育講座では、将来のお金の不安に備える話として、今回はライトな起業について説明します。起業はハードルが高いと思うかもしれませんが、リスクを最小限に可能性だけを広げる方法を紹介します。もしかするとこの場で、将来の起業や協業の仲間と出会うこともあるかもしれません。また、なぜ宗教学とビジネスという組みあわせなのか。それは両者には切り離せない部分があるからです。それはどういうことなのでしょうか。

学びにおいて最も大切なのは入り口です。ここで興味を高め、問題意識を持ち、もっと知りたいと思えば、あとはどこまでだって自ら学んでいくことができるからです。この入り口の興味深さを提供し、サポートするが私たちの役割です。そこから先、個々に学びを深めるための推薦図書も当日ご紹介します。今回は易しく、それでいて本質を捉えた、とても優れた一冊を紹介する予定です。

ぜひ、定例講座にお気軽にお申し込みください。その一歩を踏み出すことで、人生は大きく変わります。

本講座は予約制になっております。本ホームページのイベントタブ、第1回定例講座のご案内からお申し込みください。それでは11月24日(金)に、国学院大学渋谷キャンパスでお会いしましょう!あなたとお会いできることを楽しみにしています。

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